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仕事部屋

その人のいるところ。

いてもたってもいられないとはこのことでごり押しの外泊許可を貰ってそわそわ、千田さんが夕方に見舞ってくれるというのでその後の予定を訊いたらポレポレの整理券持ってるという、渡りに船で一旦の帰宅からポレポレまで、鵺的・高木さんや綿貫Pに「何してんの!」と呆れられ「脱走してきた」と言うと皆本気にする、打ち上げから帰宅までを千田さんにびっちり付き添って貰い、犬のいない自宅で一泊して昼前に病院に帰還。

昨夜のポレポレではゲストでいらした上祐氏とトークまでの時間に控室でお話させて戴いた、柔らかな表情で丁寧に答えて下さる、率直で正直な人という印象、当時にテレビで視た顔立ちとはまったく違う、あの頃の純真そうなキラキラした瞳はないけれど今のそれはもっと深く濁りなく焦点を持っている、演じているような薄皮もない、気さくな方で「麻原」「サリン」などニュースで聞いた言葉をぽんぽん並べて話してくれる、上祐さんの口から出るそれを聞いて不思議な気持ちになった、私たちにとってニュースに過ぎなかったそれらが、この人にとっては自分の人生に起きたことなのだと、彼の存在ごとずしりとした実感になった、「よくご出演を決めてくださいましたね」と言うと「木村(文洋)さんが私と同じ名前(史浩)だし前川さんには麻原の麻があるし、縁があるんじゃないかと思ってね」などの冗談も出て終始リラックスした雰囲気、いざ本番のトークも文洋がこれまでになく頑張って良いトークになったと思う、ひかりの輪広報部の方も「上祐から色んな話を引き出して下さったので感動しました」と言ってくれていた、短い時間ながら2人のトークも印象深く、直前に控室で交わした私との対話からもするりとネタを引っ張っていかれる、あの頃に唖然としながら眺めていた頭の回転の速さは衰えずだなあと懐かしい人のようにも感じ、品のいいサービス精神に感嘆、ぐりっとねじ込まれるような重みのある言葉もたくさん聞けた、その重みはすぐ目の前にいる生身の人の言葉としてのそれだと思う、やはり私は事件そのものや事件を起こす人たちよりも何も知らずに知ったつもりになる鵜呑みの人たちを恐ろしいと感じる。


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「私は、平田とも斉藤とも直接はそれほどの関わりがなくて、どういう人間なのかをよく知らないんです。だから、出頭したときに求められてコメントしているのは、殆どが、周りの人間から聞いた話なんです」
「映画を観たあとには割とすぐに感想を言語化できる方なんですが、これに関してはちょっとまだうまく言語化できないんですよ。ただ、実際の彼らは上下関係にあったわけだけど、それが17年間の中で平衡になっていく感じは、観ていて、ああそうだったのかもしれないなと感じました」
「彼らの17年間は誰にも想像ができないですよ。私にだってわからない。あの当時の彼らならどんな会話をするのかどんなふうに関わっていくのかを想像できますが、あれから17年経っていますからね。人は変わるんです。だけど、まるきり違う人間にはなれない」
「平田が震災に影響されて出頭を決意したというのは私も何かで目にしました。自分たちにとってのハルマゲドンが実は妄想であって、本当のハルマゲドンはこうした災害であったり、我々が起こしたサリン事件のようなものであって、皆が救済を考えてできることをしようとしている時に、自分たちは妄想のハルマゲドンや妄想の救済のことしか考えていなかった、というようなことを考えて、醒めていく感じだったのかもしれないなとは思いました」
「あの頃は本当にそれを信じていたんです。信じていたから、あんなことも言ったしこんなこともやれた。本当にそれが正しいと思っていた。バカだったんです」



控え室と壇上のトーク、打ち上げの居酒屋で上祐氏が語ったことは概ねこんな案配だったが、もっと生々しい、人間臭い言葉もたくさん零れていた、それはここには書かない、どう位置づけようがあれは一つの時代性なのだ、こうしてそれを振り返る時がくる、上祐さんはこの先もずっと事件についてのお詫びを口にして頭を下げることからおずおずと自分の言葉を手繰り寄せる、そういう人であろうことが見えた、私がそう感じた、それだけが真実のすべてだ、誰かと出逢う、言葉を交わす、表情に見入る、そこで自分自身が感じ取ることは、自分だけの代え難い財宝だ、過ちを重ねて悔やんでも一生懸命に生きていく、そのことにおいて彼らと我々の区別はない、同じ地表に立っている、そこにいる人でしかない、そのことがくっきりと浮かび上がる劇的な瞬間に立ち会えたと思っている。


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明日の検査結果が悪くなければ年末年始は自宅で過ごせるらしい、年明けには大きな病院に移って手術、どれくらい長引くのか予想ができない状況だけど、差し入れの漫画も山ほどあるし、病院に戻ったときにほっとした気持ちになったのはどこかまだ自分の体調に不安があるせいだろうから、先々の不安は追いやってのんびり過ごそうと思う。

たくさんのお見舞い、励まされています。
ありがとう。

  1. 2012/12/27(木) 18:06:23|
  2. 雑感
  3. | trackback:0
  4. | comment:3
<<凪ぐ。

comment

ご無沙汰しています!
大晦日だし!
たぶん
こういう時じゃないと
ご挨拶にこれないので来ました。

今年後半の僕は乱読の時代3にはいってて
はちゃめちゃに文字が読みたくって
無我夢中な状況です。

でも…
ブルーハーツが読みたいけれど
なぜか
「だめだよ!まだ読んじゃ!」って
もうひとりの僕がいうので

それをいいことに
まったく知らない作家のを
浮気しつつ読みあさっております

今年も大変お世話になりました。
来年も良い年でありますように!
気まぐれな風ですが
変わらぬ御贔屓を!
ではでは^^
2012.12.31Kenzaburo
  1. 2012/12/31(月) 19:03:55 |
  2. URL |
  3. Kenzaburo #-
  4. [ edit]

>Kenzaburoさん

乱読期、また新しい出会いがあることと思います。
豊かで良いですね。
気が向いたら「ブルーハーツ」「コイするヒト」「海へ向かう」と、読んで戴ければ嬉しいです。
今年こそ新作を世に出したいと思うのですが、うまく事が運ぶでしょうか。祈っていてください。
よい一年になりますよう。
  1. 2013/01/01(火) 02:16:05 |
  2. URL |
  3. まえかわ #-
  4. [ edit]

実は「コイするヒト」
そして、オッコちゃんが出てくる「海へ向かう」も
既に完読済です。よかったなぁ…うんうん!
逆から呼んでしまったようです^^。

ただただ
前川さんのパワーには脱帽で、そのパワフルさはどこから来るやら
ただ…お体はご自愛くださいね!人の事はいえないんですが^^
  1. 2013/01/01(火) 22:36:42 |
  2. URL |
  3. Kenzaburo #-
  4. [ edit]

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