副題に「チェチェンゲリラ従軍記」、帯に「プーチンの血塗られた闇」とある。
常岡浩介著、アスキー新書刊。
元・婚約者のジャーナリスト、常岡氏が送って下さった。
あたしは世界情勢に無知だ。
大概のことにも「みんながヤバいって言ってる」程度の認識しか持っていない。
常さんと結婚してればもの凄く詳しくなって今頃尤もらしく論じていたかも知れないかもけど、残念ながらそうはなれなかった。
常さんは、初めてのデートのとき、「待っていてくれる恋人もいない暮らしでは、戦場にいても、死にたくない、生きて帰りたいという気持ちが削げていく」と言っていた。
そんな過酷な現場での体験と、そこで出会った人のことが丁寧に綴られていて、常さんの人柄を思い出しながら読み耽った。
あたしといるときの彼は、戦場のことを少しも口にしなかった。
語れるようなことではなかったのだろう。
彼が口にしなかった気持ちを、もっと大切にしてあげればよかった、なんて今更に思う。
あたしは彼にもっと優しくあるべきだった。
どんな内容が書かれているのかは、是非読んでみて欲しい。
一言にしてしまえば、わかりやすく、面白い本だ。
もちろん、親交のあったリトビネンコの語った貴重な言葉と、それらを立体的に組み立てた流れは、無知なあたしが「そいつはヤバい」と自分の意識を持つのに充分なものだったけれど、あとがきにあたる章に書かれていることも含め、常さんの人柄の魅力に彩られたそれは、物語のようにも読めてしまう。
すべては常さんの目に映った現実なのに、安穏とした日常の中でページをめくるあたしには、物語のようだという、痛み。
今はそれを感じ取るだけで精一杯だけれど。
時間のない人には、巻末の参考資料集だけでも立ち読みして欲しい。
生々しく語られるリトビネンコの言葉に背筋がぞっとする。
絵空事のホラーじゃない、本物のホラー、むしろスプラッタというのは、友人の血を浴びて帰還する現実に対して不謹慎だろうか。
書かれていることは衝撃的なのだろうけれど、前知識がないあたしには「なるほどそういうことなのか」とすんなり飲み込めてしまった。
書店に並んでいる本には、プーチンの写真の帯がついていて、表紙の半分を覆っている。世界のどこかにこんな現実がある。
それを語ってくれる人が、ちゃんといる。
ならば、あたしたちは耳を傾け、目を開かなければ。
常さんは今、ナイジェリアにいるそうだ。
無事に帰ってね。たくさんの人があなたを待っているよ。
- 2008/08/02(土) 01:45:31|
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