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仕事部屋

悪あがき反抗期。

七里ガ浜オールスターズ「オーラスライン」の初日が無事に開幕。
稽古場での通し、前日のゲネプロ、初日と3回目の見物、限定席って言ったくせに増席もあっての満場、そわそわと開場時間を立ち飲み屋の焼酎で誤摩化し、客席へ。

二代に渡るご縁あってお誘いした一色洋平くんはかなりの緊張を見せていたけれどファンに支えられてたちまちにいつもの調子を取り戻した感じ、カンが良く安定の実力で期せずして舞台骨となった浅野千鶴ちゃんがおじさんたちをうまいこと運んでいく。
おじさんたち、実は案外に小心なところがあって、開場直前に交わした雑談の一言をもやもや気にするようなゴンザこと本井さんの繊細、悠々な印象でぶっちぎりの振れ幅を見せるガンツさんの狂気、今どき貴重とも言える質の演技ができてちゃんと今どきの加減をわかっている有さんのケレン、数年ぶりの舞台出演と言いつつ誰より楽しんでるけどこの芝居はこの人がいなかったら出来上がらない野口くんの軸足。

不安になるんだろうなあと予想していたけれど、まったくそれを忘れさせるチームワークに安心して乗っかれる。

そして座長・瀧川の見せ場、稽古場で口を出しているので仕上がりも気になるのだけど、それ以上に、ホンを書いた役割として、彼の台詞がちゃんと届くかどうかが気になる。
台詞の出来という意味ではなく、他の流れがきちんと出来上がっていて初めて響く言葉、という意味での塩梅。

手前味噌になるけれど、瀧川は巧い。
少なくとも私のホンに関しては、的確に掴んで丁寧な演出を重ね、ホンには書き切れていないニュアンスもしっかりと拾い上げて演出で補強してくれた。
その役者ぶりは、昨年の「愛のゆくえ(仮)」で充分に承知しているけれど、今回は強烈な個性を放つメンバーの中に後からざぶんと飛び込む役どころ、二人芝居なら気にせずにやれる時間の積み上げが心許ない。
にも拘らず、こなす。

良い座組だなあというのが最初の感想。
次に思ったのは、とても個人的なこと。

「シャボン玉ホリデー」「お笑いオンステージ」「ドリフの全員集合!」「雲の上団五郎一座」などの構成・演出を仕事にしていた私の父は45歳で亡くなった。
生前は「生きて喜劇の鬼となる」という言葉をあちこちに遺した厳しい人だったらしい。
その父が、「死んで喜劇の神となる」という言葉を最後に45で亡くなって、私がちょうどその年齢になった時にやっていた「愛のゆくえ(仮)」は、父の仕事とは随分と方向性の違うもので、私は自分がようやく父の呪縛から逃れられたような気になっていた。

「オーラスライン」の千秋楽が誕生日なので、それまではまだ45歳、父の最後の年と同じ年齢なわけだが、その最後の時期に、結局私は喜劇を書いたんだなあ。

つまり、初めて演出を手渡した客席で、七里ガ浜オールスターズという短い関わりの面々を眺めながら、目の前に展開される物語を、これって喜劇だよなあと感じたわけで、喜劇の鬼だか神だかを名乗った人が身内にいるってことをふと思い出し、45歳の最後にどうしてこのホンだったんだろうと考えると、なんだかそれまでは鬼とか神とかに猶予を与えられていただけで、結局は「あんたのやることはここ」って最初から決められているというか、すっぽりはまり込むだけの隙間があるのを延々迂回して諦め悪く抗っていたんだなあと、そんなことを飲み込んだ。

だからといって今さらに何ができるわけでもないし、そうと承知したからといって鬼にも神にも届きゃしないのだけれど、長い反抗期を終えたような、おかしな気分だった。
つまり、今の私にコレを書かせた瀧川くんて人にはプロデュースの才もあるってことだ。

「オーラスライン」はお陰さまで大変に好評、私が父の亡くなった年齢を越えて46歳になるその日まで上演中。

詳細はこちら。

七里ガ浜チラシ
七里ガ浜チラシ裏


ご予約は前川扱いでどうぞ。

  1. 2013/08/14(水) 17:14:05|
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