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仕事部屋

まもなく配本。

2010年に小説現代で書いた短編「まなざし」が収録された、講談社文庫「10分間の官能小説集3」が間もなく配本されます。

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このアンソロジーは人気シリーズで、1作目にも短編「ルヘリデの夜」が収録されています。

短編を書く機会が激減しているこの数年、こうして拾い上げてもらえるのは本当に有り難い。
読み返すと、書いた頃の自分の、仕事への取り組み姿勢までが透けて見えて反省もするし励まされもするのだけど、私はやっぱり自分の書く文章が好きだなあ。下手でも、書く時には言葉や流れをちゃんと択んで書いているわけで、その下手さも健気。

小説を、もっと書きたい。

バイト先では日々100人以上の人物に接するので、知らず知らずに書けることも溜まっているし、私はただ書きたくて書いていたんだと気づいてからまだ何も形にしてないし、芝居を休めるこの一年が、きっと書くべき時期なのだとは思うのだけど。

まだまだ、まだもっと溜め込めるなあ、とも思うので、急ぎません。

しばらく書く仕事をしていない今も、こうして、世の中に名前を出してもらえる機会が巡ってくるのは、このまま作家稼業も終息していってしまうんだろうかと不安になる自分に、これでまたちょっとの間は名前を置かせてもらえるんだからまだまだもっと溜め込めと告げられているようでもあり。

舞台の役者が切れ目なく次々と新しい芝居に参加し続けるのは、板の上にいなければ自分の存在が消え失せてしまうような不安に襲われるからだろうし、それは同じように感じて急き立てられるように舞台に立ち続けた時期もあったけれど、そっちはもう落ち着いていて、それは同時代の仲間に恵まれたからで。

しかし小説に関しては、書かない間にひとりふたりと編集者が退職し、ご恩のある先生方も逝ってしまい、かつての読者も新しい興味を見つけ、書くときは孤独で、同時代の仲間ともなかなか出逢えず、次の世代がぐんぐん力を伸ばして枝を拡げていくのを、悔しいとも羨ましいとも感じずにただ眺め。

私が書くべきものは何かと、手当たり次第に書くうちこつんとぶつかるように見つけられるんじゃないかと楽観していた時期も過ぎ、それが見えないうちは何も書けないような暗雲に項垂れていた時期も過ぎ、今はただ書きたいなあ、何を書こうかなあ、私に何が書けるかなあと、阿呆のように思う。

どうやら自分にはその案配がよろしい。

いや、やっぱり本になるのは嬉しいです。頑張ります。




  1. 2014/09/06(土) 23:18:48|
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