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仕事部屋

憎しみのゆくえ(仮)。

twitterやらfacebookやらで愚痴っているうちに2週目の稽古も終わって、残りの稽古は12回。
稽古日数少ないですよ、お願いしますね、と佃さんにあらかじめ言い続けていたが、お願いされるのはこっちの方で、未だろくすっぽ台本を手放せず段取りもこなせないまま組んず解れつの稽古で青あざだらけ、衣装重ね着のこちらは汗だくでのぼせ上がっているがブリーフ1枚が衣装の公佑には冷房がつらい、飯休憩もない稽古でもうひと粘りしたくとも体力と集中力が続かない、とまあ、あれこれがままならぬので愚痴は尽きない。

大きな声でセリフを喋ることも、足音を立てることも、人の身体に触れるのも、ガナったり喚いたりするのも、段取りを振り付けされて動くのも、ユニゾンのセリフを喋るのも、生理が追いつかないままそこにいるのも、衣装を決めるのも小道具を使うのも、全部が全部、これまで「やらないこと」にして避けてきたそれで、それはいいとか悪いとかではなく、私自身がそういうことを巧くこなせないからなのだけど、かれこれ20年くらいはそれを避けるためだけにやってきたと言えるくらいのそれを、今はすべて新しい課題として目の前に積み上げられて、エンゲキってむずかしいのね、と今更に思う。

お金のことも然りで、制作費をケチれば水準に届かず、水準を満たせば制作費が足らない、チケット代を上げれば売れ行きが伸びないし、クラウドファンディングに取り組んでも思うような結果は出せない。
自分たちが作り上げる作品に値段をつけるなどそもそもが難しいことだけど、カルチベートチケットを取り入れて無料券を出したりチケット代を少しでも安くすることで1人でも多くを呼び込みたいのだが、チケット代がいくらだろうと芝居なんぞ観ない人は一生観ないのだし。
これまでは、それでも私らはいつでもここでやってるから、というカッコつけができていたのだけど、ここいらが限界なのだろう。

「どんな名優も板の上に立てなければゼロです。元気・健康は最強の才能です」とまさしく名優の塩野谷さんが言った。
その通りだとしみじみ感じた1年を過ごしての今は、
「どんなに最強の才能を持った名優でも、立つ板がなければゼロじゃないか」と思ったりもする。

精神的な限界は何度も乗り越えてきたし、体調の限界は一山を越えていて、今は何が限界なのか。
日々のご予約とご支援に突き動かされて、ようように立ち向かっている有り様で、泣き言というよりもはや恨み言、もうやめますっていつ言うかも知れない、そのまま一生を終えるかもしれない、その時に惜しんでくれるなよと、こちらも覚悟するしかない。

他の仕事で忙しい合間に顔を出してくれるスタッフが、体調を気遣ってくれたり、稽古を面白がってくれたりするそれや、役者たちが宣伝に協力してくれることや、手伝いの高校生たちが夏休みのほぼすべてをこの芝居のために使ってくれていることや、無論、拠りどころはいくらでもあるのだが、それでもやっぱり板の上には独りで立たなければならない。

趣味でも実益でも希望でもない。
もっと言えば歓びでもなく苦しみでもない、ただ、自分をスッカラカンにするだけの時間は、人生の不条理、とでも言おうか、本当に不思議な時間だなあと、40年もやってきて、まだ思う。

実のところ、もう何年か前から芝居なんぞ辞めたい、辞めようと思い続けて、思い続けながらやっている。
これでおしまい、と踏ん切れる一本があれば、多分、辞めていた。
他人からの評価や興行の成績じゃないところで、「こりゃもう一生やってもどうにもならんな」と諦めがつく一本があれば、辞められるんだけどなあ、と今もどこかで思っている。

言い方が捻れているからイヤイヤやってるように思われるかもしれないが、満足することがない、完成することがないから、やり続ける、という人の感覚とそう違わない。
だけど、満足を求めるわけでも完成を求めるわけでもない、そんなもの絶対に得られないと知っている、だから「どうにもならん」と諦めが付く瞬間を夢見る。
どうにも歯が立たなくて、二度と立てないくらいずたずたのぼろぼろにやっつけられなければ終えられない。
それさえあれば、芝居なんぞさっさと辞めて「あー、人生の全部を棒に振っちゃったよ」と気が済むまで怨みたい。

今回の戯曲は、阿部定をモチーフにした現代モノであり、いつの時代にも変わらぬ愛と孤独、生と性などがアカラサマに描かれているので、嫉妬やら憎悪やらの私に欠落している感情を生み出さねばならず、それだけでも普通の精神状態ではいられない状況なのだが、人に対してそれが持てない私でも、エンゲキにはそれが持てるんだなあと気づいたので、無様に愚痴るのも悪くない。

てことは、くどくど解釈に逃げない佃さんの演出も、空っぽの状態でそこにいるだけの私から何かしら探り出そうと取っ組み合ってくれる相手役の寺十さんも、脂汗を滲ませながら裸で震えてじっと耐えていてくれる公佑も、やっぱりエンゲキが好きなんだなあ。
エンゲキが好きな人たちとエンゲキを演れて嬉しいなあ、と素直に思う。

しかしまあ、エンゲキは難しい。
はてさて。


ご支援の募集は2000円から。あと6日と2時間ちょいで終了です。
どうかどうかご助力ください。
【この公演をMotionGalleryで支援する】

むろん、公演のご予約もお待ちしています。
現在、土曜と日曜の夜の回が売れ行き好調。
【この公演をCorichで予約する】




  1. 2015/08/29(土) 21:49:16|
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やらかした。

3日ほど続けて1〜2時間仮眠で夜勤しながらの原稿作業で予定に1日早く龍昇企画「平成駅前旅館」の台本を脱稿、そのまま夜勤に行って寝ずに高校生らを集めて決起集会@シェーキーズ、ひとりがぶがぶ飲み倒して解散後、自転車を押した見知らぬおじさんにつきまとわれ、適当にあしらいながら徒歩で家に向かっていたが、途中で抱きつかれたり強引に手を引かれて連れ込まれそうになったりしたので無理矢理に振り切ってほうほうのていで家に着いて気が付くと、手荷物の一切がない。

酩酊の朧な記憶で「荷物持ってあげるよ」とチラシ200枚の入ったリュックを奪われたような気もするが不確かなので、ひとまず自他問わずの酔っぱらい救済措置として常備してあるスペアキーで家に入り、iPhoneを探すモードでリュックの中のiPadminiを呼び出すも応答がない、リュックには鍵だの財布だの名刺だの身元のわかるもの一切が入っている、マズいなあと思いながらひとまず眠って、カード類の停止連絡だけ済ませたがショック状態で他のことに頭が回らない、その日夕方から「(仮)の事情」が稽古入り。

1日置いての昨日、近所の交番に遺失物届けを出しに行ったらその場で問い合わせてくれ、該当のリュックは四谷署に保管されていると判明、タクシーすっ飛ばして四谷署、四谷近辺の路上に捨てられているのを届けてくれた人がいたらしい、現金だけは小銭までちょっきり抜かれてごちゃごちゃに漁られていたが中身はひと通り揃っていた、ご丁寧にiPadminiのWifiが切られ電源も落とされていたが、見ればうちのすぐ近くで朝の8時台に電波をキャッチしている、あのおじさんが持ち去って荷物を漁った後、自転車でわざわざ遠くまで行き捨てたということなのか、家の場所もわかっていて鍵もあるのに忍び込まれることも押し入られることもなく無事だった、鍵には父の形見のキーホルダーがついていた、護られたんだなあと思う。

稽古場では読み合わせと細かな解釈稽古が進んでいる、不条理系の戯曲なので生理や心情だけでは組立たないのだが、佃さんの「カミさんのとこに帰ってく男にコノヤローとか行かないでとかって思うじゃない?」という誘導的な質問にも「思いません」としか答えられない感情障害がネック、しかしないもんはないんだからしょうがない、そういう感情のない人物を理屈で組み立てようとするとかなり難しいだろうけど、そのまんまで立ち上がってしまうそれでどこまで戯曲を成立させられるのか不安ではあるが、話がそっちばかりに転ばないのがこの戯曲のいいところ、佃さんは「定とちんこの純愛」と言った、俺を愛せなくとも俺のちんこは愛せるだろ、というのは男性らしいファンタジーだと思う、やはり定は男性にとって「踏み込むのが恐ろしい性の深淵」なのか、女性にとっては「恋愛にウブで夢見がちな少女」なのだけど。

トテモオモシロイオシバイニナルヨ
ゴヨヤククダサイ


クラウド・ファンディングは残り18日、10万2千円が期待値の限界か、どうかご支援いただけますよう。
【Motion Gallery (仮)の事情プロジェクト】

しょぼしょぼした中年たちをヤングたちのキラキラした視線が取り囲む稽古場は、なかなかにシュール、いい年した大人がいつまでもやらかしてちゃいかんな。


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佃さんとジョー。




  1. 2015/08/18(火) 12:32:14|
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前売が始まります。

前売が本日から。

チケットはすべて予約となり、当日ご来場の際に受付でご精算戴く当日精算になります。
まだちょっと先なのでご予定も立てづらいかもしれませんが、どうかお留置きください。

アンファンテリブル・プロデュース
(仮)の事情
2015年9月17日〜24日 @中野 あくとれ
作・演出 佃典彦
出  演 寺十 吾 前川麻子 吉村公佑


8月1日午前0時より予約開始

【マエカワ扱いのご予約】前売 3,500円


携帯からの予約はこちらをクリック!




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  1. 2015/08/01(土) 00:00:50|
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