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仕事部屋

いつかのエロス。

穏やかなよい気候が続く、自分のベッドで眠っても夢と空想の入り交じった時間ばかりが続きもやもやとした目覚め、愛情だの友情だの恋情だの信頼だのなんだのの区切り線について考えながら眠ったせいか、いつかのボーイフレンドの夢を見た。

本名も、住んでるところも、勤めている会社も知らずにほんのちょっとだけ付き合っていた、お酒に強くて私がいくら酔っぱらってもちゃんと介抱してくれた、私の古い友人たちともすぐに馴染んで飲んでいた、泊まりに来ていた休日の朝は私が眠ってる間に娘を連れて食事に出かけたりして、読書好きで、PCメール専門で、背が高くて、言葉をきちんと使う人だった、「いつになったらオレだけのアサコになってくれるの」と夢の中のその人が言った。

あれを言われたのはどこかの店で飲んでるときでその時に知り合った男の子が「彼女すか?口説いちゃだめすか?」なんて酔っぱらってじゃれついてきて、その人も「別にいいよ。口説けるもんならね」なんてあしらっていて、私が迷惑しているのもお構いなしに五月蝿い男の子を面白そうに眺めていて、そのときに「この人は落ちないよ。オレだってもうずっと頑張ってるんだから」と、「いつになったらオレだけのものになってくれるのかな」と、冗談のように笑いながら言って、私はすっかりその人に夢中だったのに、どうしてそんなふうに思うんだろうと不思議だった。

夢の中では、その人は私がすぐそばにいることに気がついていなくて、私に電話をしていて、でも私の電話は鳴ってないのに、その人は私と電話で話していて、そんな言葉を口にしていて、私は「あ、彼はあの人と話してるんだ」と勝手に勘違いをして自分の電話を見たら、ちゃんと通話記録が残っていて、私は話した覚えがなくて、あーあ、またやっちゃった、と夢の中でがっくりした。

いつかのその人とは、とても短い時間を楽しむだけで終わってしまった。
「ずっと待っていたけれど、いつまでも自分のものにはなってくれないとわかったから」というのがその人が切り出した別れの理由で、やっぱり私はぽかんとして「大好きなのにどうしてそんなふうに思うのだろう」と思ったけどうまく伝えられなくて、「いやだ」とかなんとかちょっとだけ駄々をこねてみせるだけで、結局その人は「もう逢わない」と言って行ってしまった。

思い返せば、それがトラウマになっているのかもしれない。
他にもいくつかの虎だか馬だかがあるのだけれど、今日はたまたまその人のことを思い出して、そんな気分で、松江くんの新作「トーキョードリフター」の試写へ行った。

映画は面白かった。
静かで、猛々しくて、自由で、息苦しくて、暗くて、明るい。

前野健太が「ファックミー」と叫び上げる痛々しいメロディーを聴きながら、私は、あの人に抱かれる具合はとても良かったなあなんてことを、ちょっと思い出していた。

どうして不意にいつかのその人のことを夢に見たのか自分にはわかっている、曖昧なものを曖昧なままに抱えることや真ん中だけを信じることをその人が私に試させてくれたからだ、私は、あのときに私がぽかんとした、途方に暮れる気持ちをずっと抱え続けていて、そんな想いはさせるもんかと、意固地になって曖昧さにしがみついている、曖昧にしか見えないそれは、だけども実際に真ん中にあるときにはとても明確なもので、ただ言葉や形にできないようなそれで、区切り線の引けない類いのもののような気がするから、それをそのままに抱えていたいと思うのだけど、そんなふうに意固地なのは、いつかのその人との短い時間があったからなんだろう、それがどんなにしんどくても私はちゃんとここにいる、何かを待ったりせずに、ただいる。

今夜はうんと遅くなってから、ちょっと特別な人と逢う。
大学生の男の子に誘われるなんて熟女としても光栄極まりないのだけど、遠い昔に大好きだった人の息子である男の子だから、なんだか照れ臭くてニヤニヤしてしまう。
大人になるって愉しいな。
連城三紀彦の小説みたいじゃないか。

  1. 2011/09/29(木) 19:11:47|
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<<よるべなき。

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