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仕事部屋

いえいえ、こうしていられたら。

天野天街演出「赤色エレジー」@スズナリ、あがた森魚に圧倒的なオーラがあるのは当たり前としても、緒川たまきがあんなに面白い女優さんだとは、ましてや天野天街の芝居でそう思わされるとは、役者の寺十さんを観るのは2本目、ロマンに開き直るには根っこが大人過ぎるのか、大人には大人の取り組み方があるじゃないか、あと10歳若いときに演って欲しかった、しかしスズナリであんなに綺麗に楽団の音が聴けるなんてびっくり、もうね、あの幸子の指拳銃で、ロッキー・ホラー・ショーみたいに、ピーっと口笛鳴らして、一郎が倒れたときにクラッカーばんばん鳴らしたい、もちろんあがた森魚が出てくるところでもクラッカー鳴らすけど、反復場面では客席みんなで復唱して、オチは客席が先に突っ込む、みたいな、本当はそういう芝居なんじゃないのか。

昆虫系・宮島さんと客席で遭遇、児童会でずっとお世話になっていた赤目さんにも20年ぶりくらいにお会いした、赤目さん、あのとき赤目さんが「お前芝居やんなきゃダメだろ、俺たちそのために赤字飲んだんだから」と言ってくれなかったら、私本当にあのときやめてしまっていたかもしれない、あの大赤字公演から20年、またやるんだよって言えて良かった、赤目さんの前では泣けないけど、今うち帰ってきてそれを思い出して、泣いてる。

かつて赤目さんのオペをやったという音響・直さんと話してて、直さんの会社の先輩の話になり、また別の芝居のときの打ち上げで立場を隠したまま卑屈に頭を下げていた私に「前川さん、もういいですよ、そこまでしなくて、俺たち前川さんのこと知ってますから」と言ってくれた音響さん、と話していたら、直さんはちゃんと誰だかわかってくれ、芝居も観ていたと知って、ああ、やっぱりなあ、と、根拠無く納得したり。

昨夜遅くにぶらり遊びに来た大学生男子が所有する、私が21のときにやった1人芝居の台本に当時の資料が挟まっていて、そこに松本きょうじさんの名前、こないだ観た中山くんのそれはここで元祖を観ていたんだと判って寺十さんに報せたら、「俺それスタッフで付いてた」と、ここでも、ああ、やっぱりなあと納得したばかり。

狭い世界だから長くやってれば必ずどっかで繋がっていくわけで、スズナリの客席にいた初代夫と初代夫のイマ妻と、3人並んで「次のライブ、四代目夫とやるんだよ」などと話し、どちらかというと秘密主義で奥ゆかしく気ぃ使いしぃな人々に苦笑されたり眉を顰められたりし、懐かしむのは芝居や、芝居やってたときのあれこれだけで充分なわけで、そこにいてもいなくても今があれば共有できるじゃないかと、出逢うってのは、その今の一瞬だけで過去のあれこれや先々のあれこれをお互いになんとなく見透かして飲み込めるってことで、今っていうのは時間の単位だけの意味じゃなくて、目の前のっていう空間もそれで、ニアミスとか区切ったつもりとか義理の優先とか身内辛抱とか、色んな気の使い方があって、それはそれで「気を使って戴いている」ことにだけ意味があって、今このときみたいな「今」のことは、そんなもこんなもひっくるめて、全部が、ほんとにきれいさっぱりに全部が、誰にとっても「懐かしい今」に、ほんの一瞬ですり替わっていく。

初代夫のイマ妻とはたまにサシ飲みもするのだけど、私たちはいつも、初代夫の亡初代妻の話をして2人で泣いたりしてて、それはそういうことのない人には余程気味の悪い光景に違いないだろうとは思うけれど、私たちはみんな、そうやって泣いたり笑ったりするために、そのときそのときの「今」に歯を食いしばってやってきてる。

人生の大皿にお芝居乗っけてるんじゃないんだよなあ。
芝居の大皿に人生が乗っかってるんだよなあ。
なんてことを、飲むたび増える「懐かしい今」に、思ったりする。

腹を括れ。覚悟を決めろ。退くな。投げるな。ぽかんとするな。

天野版「赤色エレジー」、私、そんな話と思って読んだことなかった。
男の人はロマンチストだわね。
女はあれじゃ泣けないよ。


オフィスコットーネ・プロデュース「赤色エレジー」、12日まで。
  1. 2011/10/11(火) 02:28:44|
  2. 雑感
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<<プレスリーもそう言った。

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