振り返れば、この一年ほど「エロい」と言われたこともない。
自覚があれば役者としての道具にもなるだろうに、何がそう言われるのかがわからない。
「どこがどうエロいんでしょう」と親しい男の人たちに訊いても「だって普通にエロいよね」「わはははは」的なお茶の濁し方で役に立たないもんだから、女子に訊いてみたりもするのだけど、「一挙手一投足がエロい」などと言われる薮蛇。
どうやら「エロい」らしい。
初対面の人に「初めまして。エロいっすよねえ」と挨拶代わりに言われるようになると、いよいよ自覚せねばなるまいと焦る。
この頃は、ちょっと柄の悪い地域に出向くと電車の中で見知らぬおじさんに卑猥な仕草をされたり、労務者風の人にすり寄られて匂いを嗅がれたりなんてこともあり、いよいよ深刻に「エロい」ことになった。
平たく言えば「やれそう」ってことなんだろう。
思うに、「エロい」は、「色っぽい」と「いやらしい」の中間くらいなんじゃないのか。
「色っぽい」には品があるけど「いやらしい」には品がないというイメージ。
目黒じゃなくて錦糸町じゃなくて高島平あたり。
「エロい」と言われることは決して嫌ではないのだけれど、色っぽさは秘めるところにあるんだと思うから、自分のあけすけな資質がそこには通じてないと自覚してもいる。
「やれそう」「品がない」と思われているのは熟女としてどうしたもんか。
私の世代だと「エロい」は人妻系、女教師系、女子高生系の3種で、ワークショップの飲み会などではその場にいる女性を振り分けて笑い話にしてしまったりするのだけど、仕事の場でそれを密かにやってる男性だっていなくはないんだろう。
思うのは自由だけど、行動派がたまにいる。
そこがきっと「やれそう」基準なんだろうなあ。
一緒にいる男の人をうっかり発情させてしまっても、こちらにはその気がないからお相手ができない。
「ちっ、話が違うじゃないかよ」とがっかりする男の人の顔が視られない。
なんだか大変に申し訳ない気持ちになる。
期待に応えてあげられない自分にこちらががっかりだ。
熟女としては、欲情の対象に据えられればそりゃ嬉しい。
できるものならお応えしたいものだと心のどこかでは思っている。
だけどなあ、ただやりたいだけでモテたって楽しくもなんともないしなあ。
残念ながら好きな男の人がいるときにはそうそう器用に身体を明け渡せない精神構造になっているので、無駄な貞操観念でがっかりさせて気まずさの余り仕事を切られたりするのも「エロい」の弊害だったりするよなあ。
「エロい」のはことによっちゃ生き抜くための武器にだってできるだろうに、未だどうも巧く使いこなせずまったくの持ち腐れ、このまま錆びれさせていくのは惜しいような気もするけど、今から目覚めたら痛々しいことになりそうだしなあ。
こういうことボヤかなければもうちょっと品の良いエロさに昇華できるんだろうか。
黙り込んでいればただ不機嫌に見られるだけなんじゃないのか。
なかなかに微妙な問題ではあるが、ひとまず来年は猥談を控えようと思う。
- 2011/12/31(土) 00:56:06|
- 雑感
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コメントありがとうございます。…なんかそういう感じなんですよねw
twitterでも引き続きよろしくどうぞー :)
- 2012/01/05(木) 13:03:24 |
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- 前川麻子 #-
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