仕事部屋

さて次へ。

「ALPHA」公演を終えました。
ご来場下さった皆さん、どうもありがとうございました。

タレント事務所系のプロデュース公演でありながら一ヶ月以上の旅公演を終えたチームのように最後の最後まで皆が仲良く、気持ちのいい現場だった。

打ち上げでも身内ネタ下ネタ暴露話演劇論があちこちで炸裂して果てしなく賑やか、終った芝居には途端興味の欠片もなくなって打ち上げは大抵むすっと黙り込んで飲むだけなのだけどなんだかんだと乗せられて結局朝まで喋り倒していた、終った芝居の話なんて面白くない、皆それぞれが次の話をすればいいじゃないかなどと言うくせに昔話ばかりしてしまうのは、今ちょうど彼らがいつか私が立ち往生したそこに差し掛かっているからで、「僕の芝居にダメ出ししてください」から始まって「前川さんがそういうところに辿り着いたのはいつ頃だったんですか」「どうすれば前川さんみたいな芝居ができるようになるんですか」などと簡単には答えられないようなことを訊かれ続け、そこを話すうちに自分にとって何がそれであったのか、今回の自分が何をしたのかなどなど改めて気づかされ、カラオケ組と飲み組とで二手に別れた後も最後は竜司兄さんとたった今気づいたことを話して頷き合っていた。

この芝居、そもそもは寺十さんが「そろそろまた女優のマエカワが観たい」と言ったことが最初で、言われてみるとなるほど今年の大プレッシャー仕事の前にちゃんと役者で現場に入ってみたい、人から演出を受けるということを改めて意識したいと考えた、旧知の女優で制作者で劇団主宰者でキャスティングプロデューサーとしての野心溢るる森島朋美女史に「5月くらいまででどっか出してくれるとこないかね」と相談したのが12月、すぐに三浦の名前が出て、三浦演出作品のDVDを二本見せてもらい小一時間ばかり話をした、「芝居は固めない方向で」と言うそれと顔合わせで見知った他の顔ぶれでこの座組での自分の役割が飲み込めたそのまんま、役割は果たせたはずだ、因みに寺十さんの私への感想は「けっこう機敏だった」で森島さんは「マエカワは何をやってもマエカワだった」とのこと、誰と何をやってもちゃんと楽しめる年になったんだねえ、有り難いねえと、こず恵さんとしみじみ言い合ったそこんところ以上に、欲しかったものは全部もらえた。

大人たちは皆優しい、若い連中のあれこれを自分のいつかに重ねて、期待や痛みやなんやかんやをつるつる飲んだまま黙々と自分の役割をこなす、そのときたまに生じる「しんどいなあ」は同じ大人が少し離れたところで静かに察知して、交代したり支えたり慰めたりからかったりしながらお互いの立ち位置を常に確認して一つの流れになっていく、芝居ってそういう作業なんだなあと改めて思った、演出の三浦がまだ若いってことが何より救いだったのかもしれない、若手の頑張りより手練れた連中が拗ねずにやることが一番大事なことだなあと、いつしか若手から弾き出されてしまった私がしみじみ思う、「勉強になります」なんて言葉はお行儀良いだけで刺さらない、何も質問せずとも黙々耳を峙てて大人の話に聞き入っている青年の目にやられるのだ。

相手役であった小野寺は稽古中から私を理解しよう信頼を得ようと必死に食らいついていて、それなりの信頼と愛情は交わしたはずなのに、芝居が終わるとそんなものはたちまちに消え失せ、残るのは、こいつとはいつどこで知り合ったんだっけと思うくらい長い付き合いがあるかのような古女房、芝居は下手だけどそういう自分のことをしっかり理解している人で開き直ることのない辛抱強さがある、献身的ないい相方だった、何から何まで本当にありがとう。

(株)FPアドバンスという会社はタレントのマネージメントをするところで、お芝居の制作なんぞはまったく素人なのだけど、社長が「ほんまでっか、知らんかったわあ、すんません、勉強します」と言えるうちはきっとたくさんの人が力を貸すんだろう、胡散臭い企画に乗っちゃったなあと思って警戒していた私も、社長のそれにうまうま全力を振り絞られたくち、「失敗ばっかりですわ」と項垂れる社長を見て何度大笑いさせてもらったか、社長のいないところで「ばっかじゃないの!」と罵倒したこともあるけど概ねは直接「ばっかじゃないの!」と言わせてくれる懐あって助けられた、真面目であること誠実であること謙虚であることの底力を社長に教えられた、関西人としては繊細過ぎるんだろうけどいい年したおっさんが「夢」を口にできる図太さがある。

三浦、東京のボンボン育ちは最強のコンプレックスだろう、だけどそこからくる楽観的な性質に自身が助けられているはずで、私が三浦との作業を楽しめたのもそこに根っこがあるんだと思う、千秋楽が終って楽屋に駆け込んだ三浦が自分の劇団員たちに「すごく良かった、ありがとう」と言っているのを聞いた、自分の「ありがとう」が持つ力を判ってる人は間違いなく演出家だ、初日に手堅く役割を果たして物足りない顔してる私を目敏く見つけて、最後まで貪欲に演出することを諦めなかった、勃たないのにしゃぶってくれとせがむような、勃たないけどどうしても射精したいのだと駄々をこねるような、などと下品なたとえをして一番顔を引き攣らせるのはいつも三浦だったなあ。

打ち上げ会場を隅の席から見渡して、総勢19人全員の顔と名前もしくは渾名を覚えられたことに安堵しつつ、それでも役名と本人が一致していないことを指摘されてがっくり、出番間近に「ヤバいヤバい」呟きながら楽屋から袖裏に走ってく私など彼らには心細かったんじゃないだろうか、稽古から本番まで毒づいてからかって悪ふざけばかりしてたけど、「顔合わせから打ち上げまでの間でこんなに印象が変わってったのはマエカワさんだけだ」と数人に力説された、それはきっと私が変わったのではなくて彼らの人を見る目が変化したんだろう、彼らはとても素直に私のやることを受け入れて稽古場でもほんのお遊びでやってるような小返しすら食い入るように見てくれていた、何が違うんだろう、何をやろうとしているんだろう、何を考えているんだろうと、一挙手一投足を凝視する彼らにはきっと全部見えたんだろう、彼らの真摯さがなければ不真面目な私は穿ったことをしてお茶を濁しただけだったのかもしれない、毎ステージごとに律儀に挨拶にきて握手したりハグしたりの彼らを私やこず恵さんは「めんどくせーよ」と笑っていたけれど、ちゃんといちいちそういう馬鹿正直な生真面目さに影響されていたんだから。

ああ、愉しかった。
イケメンくんたち、カワイコちゃんたち、また遊ぼうね。
さあさあ、みんなそれぞれの次に行きましょう。


今度はいよいよ準備会、3月10日は仕事入るかもとのことで寺十さんの強力推薦俳優2名に代役をお願いしている、お二人とも私は初手合せ、寺十さんの設定とは違う役所でのエチュードをやるつもりでいたら、寺十さんから「もしかしたら10日行けるかも、わからないけど。もし行ったら3人とやる?」連絡、無論「やる」と答えたが、1日で3人と3セットのフルエチュードなんてやったことない、けど、やる。

やるよ、やりますとも。

たった今、芝居が産まれ落ちる瞬間を、見物してください。
んで飲んでってください。

「愛のゆくえ(仮)」準備会ブログ にて、台本ダウンロード、前川×寺十のエチュード稽古ダイジェスト版動画を公開中。
お申し込みはCorich! 予約フォーム 「愛のゆくえ(仮)」情報サイト からどうぞ。
稽古場あんまり広くないので、先着20名様にて受付を〆切ます。




  1. 2012/03/05(月) 19:23:09|
  2. 雑感
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