オフィス・コットーネのプロデュース公演「黄色い月」@スズナリに伊佐山ひろ子女史を誘って雨の下北沢、高田恵篤氏の演出は確かにあの戯曲に合ってるんだと思う、が、強烈な何かを残すに至らずでちょっと物足りない感じ、今の自分が欲するものが違う質のものだからだろうけど。
終演後べべさんと新雪園、芝居に付き合ってたテルコとチバミクに色々気遣ってくれる様子にちゃんとオトナの人なんだなあと失礼ながら感嘆、スズナリで会った塩野谷さんも合流して、オトナのお兄さんお姉さんに生意気言いながら紹興酒のボトル6本、勿論コドモたちは先に引き上げた。
最後は塩野谷さんと20年ぶりのサシ飲み、ここ一週間の反省含めて今抱えている不安や怯えを打ち明け、懇々と慰められ励まされ、ちょっと泣きました、我々はいつでも芝居の話しかしないけど、教わっていることはたくさんあるんですよ、兄さん。
バイトだと思って早起きしたら現場がお休みだった、二度寝でお酒抜いて、昨夜のうちに成田くんが届けてくれていた準備会の稽古映像をチェック、やっぱり真打ちパートだけは記憶がなく映像で視ても何一つ思い出さなかった、確かにへべれけ、けどエチュードとしてはそんなにマズくない。
勿論マズくないなんてところに満足はない、酔ってふわふわココロが軽くなって面白いように揺れる、画像を視ていて自分が相手の台詞にがっつり傷ついてるのとか怒ってるのとかくすぐられてるのとかがわかるからちゃんと芝居になってるじゃんと思うけど、それと同じことを飲まずにやれなきゃしょうがない、これじゃまるでさや侍。
いろいろ、ほんとに色々なことを、もういいだろってくらい考え続けた、昔の私だったらもっとどうしようもなく凹んで、全部投げ棄てて逃げ出していただろう、我ながら根気よくなったもんだと感心する、「絶対に大丈夫」なんて言葉、昔は怖くて使えなかった、だって今でも「絶対」なんてこの世にはないと思っている、それでも今は言える。
それは根気じゃないのかもしれない、きっとただ信じる筋力がついたんだろう、ココロなんて危ういものを、状況や状態なんて不安定なものを、運やタイミングなんて不完全なものを、待てるってことは信じてるってことだろう、そう言葉にするときは揺らいでいるときなのかもしれないけれど、揺らぐことが怖くない、それがいつかとの違いだ。
伝えたい言葉は未だ見つけられない、初めは飲み込んでいる感覚があったけれど、今のそれは飲み込むでも溜め込むでもなく、言語物質が生成されていないという感覚、ふと思い出した、かつて私がそうだったのはいつだったか、潔いほど言葉を使わずに日々を過ごしていたあの頃は、毎日芝居をやっていて、他人の言葉ばかりを喋っていた。
体内にこぽっと湧くもの、それは自然にしていれば自分の言葉になって排出されるものだけど、他人の言葉を口にするという不自然なことをするときには必要な物質として吸収されてしまうのかもしれない、次々吸収されてそれでもまだ足りなくて、身体はこぽこぽ湧いてるのに、言葉にはならない。
あの頃の私が書いた芝居には、「言いたいことがひとつも言えない」という台詞があった、台本には書かなかったけれど、稽古していて付け足そうと思いつき、登場人物全員がてんでばらばらなタイミングで客席の中を歩くときにぽそりとその言葉を呟く。
つまりあれだ、体内には言葉になりきらないもやもやしたものがいつだって湧いていて、そのモヤモヤを抱えてるってことが、演じる状態、物語る身体であるってことなんじゃないだろうか、であるならば今の私は随分と久しぶりに演じられる状態に届いているんじゃないだろうか。
稽古映像で自分の芝居を分析するとかつて「スイッチングの芝居」と言われた自分の資質が随分と変化していることが判る、その頃は両極に広い振れ幅がキャラクターに見られていたけれど実際のところはスイッチング操作をしている自分を隠していたんだろうと思う。
あるとき、ワタシには振れ幅なんてない、ただのスイッチャーだと気づいて、がっくりと自信をなくした、人様に見せられるものなんて何一つないと恥じ入って演じることが怖くなった、それからしばらくしてもう一度芝居をやろうと思ったときには、スイッチャーとしての自分を曝すことから始めた。
今も薄々に私はスイッチャーとしての自分を曝す、スイッチング操作ができないスイッチャーとして、スイッチに手をかけて小刻みに震える自分を曝す、如何にスイッチしないか、幅の中に取り込まれずにそこにいられるかを試しながら。
そうか、「演じる私」は着ぐるみだったんだな、重たい着ぐるみだからジタバタと大振りに動く、着ぐるみを脱いだワタシはただそこに踞って一歩も動けない、目を凝らし耳を峙て様子を窺う臆病な動物みたいなもので、撫でようとする人には噛み付いたりもする。
まあいい、ココロなんてわからない、手がかりはもういらない。
- 2012/03/19(月) 01:32:03|
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