仕事部屋

歓喜の鐘が鳴る。

音楽の人たちは居心地がいい。
16時に会場入りして、ゆるゆるとセッティング、昨日の練習に来なかったオランをネタに「オランがおらん」を皆が連発しながら、オランの椅子が空のままにサウンドチェックして何曲かを合わせていく。

ロイヤルハンチングスの瀬戸さんとはこの日が初めて。
飲み会では会っているけれど。
瀬戸さんは、台所純情のトラックにも参加してくれているので、音だけは良く知っている。

「オランがおらん」「オルに改名させろ」などと笑いながら、皆がオランを心配している。
電話にも出ないらしい。
家族と一緒に暮らしていると聞いて、安心したけれど。


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絶対に飲まないと決めて意固地に野菜ジュースなんかを飲んでる私を尻目に、そこの蕎麦屋がプレミアムモルツ1杯150円だよと嬉しそうなバッキーは既にアルコールを入れており、リハ終わってちりぢりに外へ出たメンバーは皆その蕎麦屋に行ったらしく、だって150円なんだよといい具合のテンションで戻ってくる。

開場後ほどなく現れたマツジュン夫妻がなんだか今日のマエカワさんは様子がオカシイなどと冷やかす通りアルコールがないとテンションが上がらない、ヒラケイとノヤミキにも会った途端にアサコちゃんが普通にしてるとげらげら笑われる始末で、ますますローテンションに傾く。

人前に立つことに慣れ過ぎて緊張しない故にアルコールを呷り、飲んで失敗しちゃ立つ瀬がないという理屈で無理矢理の緊張感を持つのがいつもだけど、飲んでないのに失敗しちゃもっと立つ瀬がない訳で、しかもこの日は朝から「行く」連絡が続々入って大切な人たちがこぞって来てくれる状況。

必然、テンション上がってないなあと感じるココロと裏腹に奥底ではびりびり緊張していたらしく、オープニングで1人ぽつんとステージに上がってから足が震えていることに気がついた。

スタンドマイクと譜面台の前で、大福のレコードに合わせて、熊ちゃんの言葉を朗読する。
役者としては暗唱すべきなのだけど、大福のメンバーが皆譜面台を立ててやる人たちなので、それに倣った。

音を聴け、音を聴けと唱えながら、自分の声がすいと乗せられるタイミングだけを探って音を聴く。
自分が口にする言葉に引っ張られないよう拳を握るようにして、感情をめくらめっぽうに走らせ、走りながら音を聴いて、感覚だけで声を発するタイミングを探る作業。

これが、面白い。
昔、DJとやっていたあれと同じなのだけど、どうやら私はこれが一番好きなのだ。
「世界」対「私」。
ただ、音の世界にどう噛み付くか、それだけのことが、心底楽しい。

言葉の意味を伝えようなんて微塵も思わない。
感情を自由に走らせたいから、感情移入が不要な文章を熊ちゃんに作ってもらった。
何度か校正させてもらって、最後は喋りながら語尾を調整して仕上げた文章。

ここに掲載する。
熊ちゃんには無許可だけど、もうすでに私の口から出た言葉になったんだから、いいだろう。


この世の中のすべてを肯定しきってみせる、
そういう力の在り方なのだ。
それが音楽というものの本性なのだと信じている。

窮屈。
どうしようもなくくたびれきった段ボール箱のようで、
そのくせ頑固にいつまでも動こうとしないような、そんな状態。
閉じこもっているからどこも傷つかないけれど、とことん窮屈。

ここから這い出てやろうと思う。
その先が誰のどんな大事な場所だろうと、
ズカズカと土足で踏みつけてでも、ここから這い出してやる。

よくよく考えてみれば、
後生大事に守り抜くようなものは持ち合わせていないのだし、
何より自分の弱さを卑屈に思ってる場合じゃあない。
自分という広大で未知なるものをしっかりと掴み取るには、
そんなもの蹴っ飛ばすくらいでちょうどいいと思ってる。

それを掴んでどうなるもんでもないのかもしれない。
その先には何もないかもしれない。
というかおそらく何もないだろう。
何かがあってはイケナイとすら思える。

それでいい。

拡げていくべきなのだ。
今どきのこの世は「自分」で出来上がっているのだから、
それだけを拡げていくべきなのだ。
「自分」を拡げていく、
その闘いの真っ只中にこそ救いがあるんじゃないか。

そうでなければならない。
そこにこそホントウの音楽が流れる。
そうでなければならない。

この世の中のすべてを肯定しきってみせる、
そういう力の在り方なのだ。
それが、音楽だ。



第一部の参加はオープニングのこれだけ。
わくわくと大福を楽しんで、しばしの休憩時間となり、第二部の1曲目に再び参加。
「鮮やかな魚」というその曲の後半で、私は「おーい」と叫ぶ。
最初は熊ちゃんが「おーい」と呼び、私が「おーい」と叫び、皆が口々に「おーい」と
応える。

そのパートにくるまで、なんでもいいから「おーい」を発せられるような状態になっていて欲しいと熊ちゃんからの発注があったので、無言劇風に、最初からいる。
私が何をしているのか、演奏中のメンバーがちらちらと視るのがおかしくて、ああ一緒に立ってるんだなあと感じた。

その曲の後は引っ込んで、次の登板は「民衆讃歌」という曲。
再び譜面台を引っ張り出して立ち、今度は生声で、つまりマイクなしの地声で、マイクで拾ってる演奏に乗せて、オープニングと同じ文章の朗読をする。

アンプラグドだからできるんだけど、皆の加減がとてもいい。
こんなに腹筋使ったのは何十年ぶりだってくらいの発声。

音を聴け、音を聴け。
顔を上げろ、顔を上げろ。

声を通り易くするために両手を後ろで組んで立ったのだけど、写真で見たら学芸会の子どもみたいで変な格好だった。
まあ、いい。

私の横では、白塗りのやっすんがごにょごにょと踊っていて。
反対側にはコントラバスがあって熊ちゃんがいて。
心強かった。

私とやっすんの参加はその曲でおしまいだった。
ぎこちなく挨拶してステージから引っ込んで、やっすんは白塗りだから、私がバーに駆けつけて、ビールを持って楽屋に戻り、2人で乾杯した。

それから私は客席に回って駆けつけ3杯、解放される心身で一緒に歌ったりぎくしゃく踊ったりして、大いに大福を楽しんだ。

アンコールでやった曲、熊ちゃんらしくて大好きなんだ。
カリフラワーズで1番好きな曲と近い雰囲気の。
最年少メンバーのほうすけ3は最後の挨拶に登場しなかった。
だって第二部の始まりからもう眠たそうだったもの。

これは、前日のリハのときにほうすけ3が私に書いてくれたラブレター。
意味は私にだけわかる。


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オランは最後までおらんかったけど、椅子はずっとそのまま置かれていた。
いつオランが駆け込んでもいいようにマイクもちゃんと立っていた。

どうしても観て欲しかった人たちは、皆とても楽しそうな顔をして、帰って行った。
私は大福らしくやれたんだろうか。
音楽がやれたんだろうか。






  1. 2012/05/12(土) 02:53:42|
  2. 雑感
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<<ヒメてハレルものなし。

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