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仕事部屋

日曜から、火曜まで。

日曜の半日、ボーイフレンドの部屋を訪ねて、ちょっとだけ特別な時間を共有した。

「やめてー」と言われながら無遠慮に部屋のぐるりを眺めたり、台所のコップを勝手に使って水を飲んだり、ビールを買いに表に出るとき自分のブーツを履くのが面倒臭くて彼のスニーカーを借りてぶかぶか道を歩いたり、これまでろくに眺めたことなどなかった彼の顔を初めてまじまじと見つめたり、それじゃあ帰りますとハグするときにちんまい奴と思っていた彼の顔が見上げるところにあって本気で驚いたり、小説にしたら読む方がこっぱずかしいような、それをぬけぬけとこんなところに記しているあたしってどうなのというような、そういうことにまみれて、ちょっとだけ特別な時間を共有できたことに、今はとてもわくわくしている。

部屋を出て食事しに行って話していると、やはりもしやと思った通り、彼は案外にしゃんとした大人で、あたしの狡いところもややこしいところも呆れるほど単純なところも、おおむねはちゃんと透かしているのだとわかり、「ああ、なるほど。あたしはこの人が好きなんだ」とわかった。

身悶えする恋しさなどではなくとも、身を削る切なさなどではなくとも、もしかしたら恋とは呼ばなくてもいいものかもしれなくとも、どこにも辿り着かないジレンマを抱えているのかもしれなくとも、静かに暖かく先を急がずに紡いでいける、人生に役立つ恋というのがあったりする。

一番重要なのは、こういう恋を手に入れたことを、あたしが小説に書けるかどうかなのだが、多分、書かないような気もしていて、なんで書かないかというと、それはつまり段落とか結末とかがまったく見えていないほどそれが始まったところにあるからで、ケチケチしてるわけじゃないんだけど。

恋をする人が恋人を想って眠れずに迎えてしまう朝は、小説になる。
だが、恋をする作家が恋人のことを想うことなくただ恋をする自分の心を記す言葉を探すうちに迎えてしまった朝というのは、もうやっちゃってるし。

最初の結婚をしていたときに、すごく好きになった年下の男の子がいて、それがこれまでにした恋の中で一番正しい恋だったと思っているせいか、正直、年下の男の子と恋をするとどうしてもその男の子の残像に重ねてしまう。
色が重なるほど嬉しい。けれど、同じ画には絶対にならない。もちろん、同じ画が見たいわけでもない。ただ、その色が好きというだけだ。

そして、時々気づく。
今のあたしはもっと大人で、そのあたしを好きでいてくれる誰かも、もっと大人だ。
そりゃそうだよなあ、夢を抱えたハタチの男の子じゃないんだもんなあ、今あたしが見ている彼はきちんと社会に結びついているいい年した大人の男の子だもんなあ。
へえ、大人の恋って楽しいなあ。
というようなことを、火曜の朝までかけて考えて、ようやく気づいたりする。

大人には仕事という息抜きもあって、そうそう遊んでばっかりもいられないから、またしばらくは一人でこんなふうに反芻する時間が続くことになるのだが、ああ、あの頃のあたしはそれが楽しめなくて家を飛び出したりしてたっけ。

そうせずにいられるあたしは、やっぱりちゃんと大人になっているに違いないし、そういうものをちゃんと抱えていられる大人でいたいと思う。
きっと、そういう自分でいさせてくれる人を、勝手に択んでいるんだろう。

そんなわけで、月曜のあたしは上機嫌だった。
上機嫌のあたしは、親方と犬夫妻と散歩をして、仕事っぽいことをちょっとだけして、日曜のそれとは意味合いの違う特別な時間を親方と過ごして、夕飯をちゃんと作って、恋人と連絡を取り合って、仔犬の世話をして、そういう自分についてくどくど考えて、考えたことを書き留めて、あれこれにとても満たされた気分で、火曜を迎えた。

吉岡の受賞祝いの仕切りをすっかり忘れていたりもするが、それは、まあいいか。へへへ。
  1. 2007/03/27(火) 06:57:33|
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