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仕事部屋

混沌の轍。

気がつけばあっという間に1週間、すべきことの区切りがない滑らかな時間はするすると過ぎていく、先週も現場出勤は1日だけ、たちまち体調崩したが原稿の直し作業を黙々12時間集中で済ませ、その後はじっと寝ているばかり、2時間起きて4時間横になるというサイクル、これで上げ膳据え膳なら入院と変わらないのだけどそうもいかず、最低限の買い物と食事の用意、洗濯と掃除はちょこちょこやっているのだけど、動いて気分がよくなって普通の感覚で動くとたちまちに微熱や痛みに警告され渋々ベッドに戻るという案配、座り仕事の姿勢が長いと痛みが強い、寝床にmac持ち込んで半身起こしながらだと腰だの肩だのが辛くなって長時間は厳しい、結局眠ってしまう、そんな中に入院中に手塚治虫全集を毎週10冊ずつ貸してくれている後輩が突然の来訪で次の10冊を届けてくれたりして、働けずにいる環境や治療費のことや手術のことなど旧友たちや恩人が向けてくれる心配に支えられ、埋め損ねている先の日々に滲む不安を見ぬ振りで誤摩化す。

金曜にコルセット綿貫Pとルテ銀(…と平田敦っちゃんが言っていて通っぽくてカッコいいから真似をしている)でべべ子出演の「阿修羅のごとく」、そりゃあんだけ人物が完成して台詞が跳ねてる原作だもの誰がどうやっても面白くならないはずがない、一流女優さま方の丁々発止の中で大高さんだの中山くんだのがチャーミング、べべ子は思い切ったことを真っ直ぐにやっていて出てきた途端の異彩に思わず噴き出したが、ダメだ笑ったらべべ子がトチると我慢して見守るも、ハケ際の振り切り方で堪え切れなくなってとうとうワタちゃんと爆笑、満場の客席で大笑いしていたのは私たち2人だけだったんじゃないかと思うが、次の出番ではべべ子が出てきた途端に客席のあちこちから朗らかな笑いが起きていた、大人の女性客はべべ子のことあんまり知らないのか、この人のなんともいえない可笑しさを笑っていいのかどうかと戸惑わせられる登場シーンだったのだろう、最後の登場シーンにはいつものべべ子らしさもちゃんと立ち昇って、そこでもお客さんは笑ってくれていた、長女と愛人関係にある所帯持ちの女房という役どころ、常識人がみれば同情に偏って辛気くさくなるし道化にすれば反感を買う、勿論我々の見方は贔屓目に過ぎるのだが、べべ子がやると「この女房じゃ愛人作られてもしょうがないわよ」も見えるし「だけどあの男やっぱりこの女房は捨てないかもよ」もあるし「この女房もきっと人並み以上に苦労してきてるのね」と親しみを持って存在を飲めるんだからキャスティングって大事、コルセットを観てくれたプロデューサーなのか演出家なのかが声をかけてくれたとべべ子が嬉しそうだったから観たのだけど、べべ子は本当にとても素敵だった、他には三女を演じた高岡早紀が想定外の面白さで、まあそもそも三女の役が一番面白く作られてるっちゃそうなのだけど、その役割をきっちり果たしてそれ以上の魅力だった。

終演後に楽屋に寄って大高さんや中山くんと十数年ぶりのご挨拶、べべ子がどうだったと訊くので「笑ったらべべ子がトチると思って笑うの我慢してた」と、「精一杯気取ってるんだから」と言うので「あれは気取ってるんだ」と笑ったら「演出家なんだからそれくらい見抜いてよ」ってぷーってしてた、べべ子が喋り続けるので大高さんが「べべさんがこんなに喋ってるの初めてみた」と言い、「そうよ、わたしこれまで大高さんと一度も喋ってないもん」と何故か得意げなべべ子、コルセットをやったのも遠い昔のように感じるけれど、ほんとの遠い昔にあれほど憧れて、最初はとっちらかるような緊張で対面したべべ子とこんなふうに笑っているなんて、しかも、旗揚げ前に不躾な心持ちで第三舞台のオーディションを受けたのが最初でその後私がバイトしてた事務所の女優さんと再婚されたので私が最初の離婚で処分に困ったダイニングテーブルを引き取って貰ったというなんだかよくわからないご縁の大高さんがそこにいて、撮影の打ち上げで一緒になった後に一度だけ電話で話したことのある中山くんもいて、これまた久々に再会した敦っちゃんがいて山本亮さんがいてワタちゃんがいて、芝居の楽屋ってのはそういうものだと思うけど、人生の混沌だなあと至極愉快。

小劇場ベースでも商業ベースでも映画でも芝居でも、役者がすべきことは変わらない。
見えていなければ辿り着けない。

今週は「転轍機」という言葉を覚えた。


ようやく再開のWS、詳細はこちら

本日より映画「愛のゆくえ(仮)」は名古屋シネマテークにて公開。
京都みなみ会館では2/1まで。
神戸、福岡での公開日程も決まりました。
詳細はこちら




  1. 2013/01/26(土) 12:37:23|
  2. 雑感
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<<ぼやぼやしているうちもう2月になっていた。

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