ここ数年、洋服を買う店は一つだけ。
理由は、いくつか。
テイストが、合うから。
肌心地がいいから。
お店の空間と人が気持ちいいから。
近所だから(正しくは、二年前まで近所だったから。今も遠かないが)。
そこんちのコレクションを見物しに行ったのは三度目。
高架下の練習トラックの上に足場を組んでの会場で、霧雨が吹き込む中、
これまでの倍以上の観客、ランウェイも二倍。
人間離れしたモデルさんたち、びしっとツボにハマるコレクションはもちろんだけど、
なんて幸福そうな人たち。
そういうのを観てるのが、本当に好きで。
いつもショーに呼んでくれてありがとう。
シャツ一枚でも。小さなバッジ一つでも。
作ってる人がいるわけで。
そりゃまあピンキリだろうとは思うけどね。
作ってる人と、売る人と、買う人。
それがちゃんと見えるのは、やっぱり気持ちがいいもんです。
初めてお店に入ったときにゆったりのんびりと対応してくれたあの人や、
数年前に「初めてコレクションショーをやることになったんです!観に来て戴けますか?」と弾んだ声で電話してきてくれたあの人や、どっちの丈にしようかと悩むコンサバなあたしに「マエカワさんはこっちの雰囲気ですよ!」と上手にセールスしてくれるあの人が、
「あーっ、終わったー」って顔でいるのが目に留まると、じんわり幸せな気分になるのです。
売る人って難しいんだろうな。
作る人の気持ちと買う人の都合をどうやって結びつけていくかでしょ?
作る人を見る機会はあんまりないから、売る人が大切にしてる様子から、きっとたくさんのあれこれから作られたんだろうなあ、と想像をするしかないのだけど、
少なくとも、その店は、あたしにとっては、それらが確実に結びついている空間なわけで、
あの人たちがそこで働くことを誇らしく思っているだろう雰囲気があるのも、好きです。
世の中には「だらしない店」ってのも、ありますからね、際限なく 笑
今日のショーにはドキュメンタリー番組の取材が入っていました。
きっと近々にオンエアされるのでしょう。
つまるところ、あたしはこの店の為に仕事をしているようなもんですわ 笑
年間にどれほどお買い上げしてるかなんて…
恥ずかしくて言えない。それほどに、ここんちの人たちを、愛して止まないのです。
ここの服なんて、もう、がしがし着てしまうもんね。
舞台でだって、着ます。衣装、その日の普段着ですから 笑
流行は、あるかもね。
そのうちいつか、もう着られないなーと思う日が、あるかもしれない。
お店がなくなってしまう日も、いつかきっとあるんでしょう。
年だってとるし。
でもね、そしたら、寝間着にでも作業着にでもしてやろうではないかと。
あの人たちのことを、むふふ、と思い出しながら、やっぱりがしがし着る。
作った人は泣いて喜んでくれるだろう 笑
売る人は、そうなったとき、どこでどうしているんだろうなあ。
そういえば、はたち前後の頃には、アニエス・ベーばっかり着てました。
新宿・伊勢丹の一階にあったアニエスの店長さん、元気かしら。
退職されて、お嫁入り前の世界一周単独旅行の最中に、葉書を送ってきてくれた。
なんだかねえ、そこに居続けないような気がするってのも、すごくいい具合だと思います。
いつか服が売れなくなって、お店がなくなって、みんなばらばらになって。
いつかサイズが合わなくなって、まるで似合わなくなって、箪笥の肥やしになって。
それが当たり前のことだと思うから。
そういう道筋が見えるなんて言うのは、大変に失礼で悲観的なことなのかもしれませんが、
それが、すごくいいことに思えるのですね、ここんちの場合。
あたしは60年代に産まれてよかったと思ってる。
80年代の渋谷に育ってよかったと思ってる。
今の東京に生きていてよかったと思ってる。
そう思えることも、そう思わせられることも、たいそうなことではないでしょうか。
- 2006/09/13(水) 00:25:46|
- 雑感
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