娘のブログによくコメントをつける。
一方的な説教とか、一方的な励ましとか、一方的なアドバイスとか。
娘も「もやもやがすっきりした、ありがとう」なんてコメントを返してくれる。
で、思った。
人の心の内側にあるものって、結局は言葉なんだなあと。
「考え」も「気持ち」も「感覚」も、結局のところ、全部言語で整理してるだけだよね?
だから、言葉にできないものは、全部もやもやのまま残される。
ボキャブラリーが足りなければ心の内側を整頓できない。
他人に悩みごとを相談するのは、そのためなんだな。
大体の相談事は、他人の「考え」や「方法」が欲しいわけじゃなくて、ただ「言葉」が欲しいんだと思う。
不足していた言葉が他人によって補われれば、すっきり整理がついたりする。
よって、バカほど悩む、は、ある意味真実ですね。
何をもってバカと定義するかは別のこととして。
そんで「上手な彼の愛し方」とか、そういった、多くの人のもやもやを掬い取る「言葉」が豊富に書かれた本が売れる。本が売れる、というよりは、言葉が売れるんでしょうな。
多くの人のもやもやを掬い取るって時点で、その言葉はかなり浅い意味合いの平べったい言葉になりがちだけれど、それは確かに、もやもやを解消してくれたりする。
「彼が好き」とそのまんまの言葉で書かれているものの方が、事細かな描写で「彼が好き」を伝える文章よりずっと多くの人に役立っている。
たとえば、蝶々だったり相田みつを、だったり。
多くの人に共通する、ちょっとしたもやもやをさらっと言葉で掬い上げる芸。
てところで、小説はなかなか売れない。
はなから共感できそうなシチュエーションの物語しか選ばれなかったりする。
「十五」にもの凄く共感してくれている友人がいるんだけど、そりゃあんた、どんだけ不良娘だったんだって話でさ 笑
「どんな本が好き」というだけで、その人が知れたように思うのも、そのへんのことかもしれない。
本を読まずとも潤沢な言葉を知る人は存在するんだろうけれど、その応用の幅広さを知らないという点が、不勉強=不幸せだ。ビジネス書ばっかり読んでる人を読書家とは言わないってのも、そういう基準だろう。
限られた言語を多様に使いこなして人の心の内側にある同じものを掬い取ろうとするのが小説だから、小説を読まない人は、言葉を知っていてもその使い道を知らなかったりするし、そういう人の場合、自分の考えを一生懸命話してくれるときも、わかりづらく伝わりづらくて、聞いてる方が同時進行で整理しなければ真意を掴めなかったりする、要は話し下手だ。
複雑な構成の小説を読みこなす人は、人の心の複雑さや、言葉の選び方、話の組み立て方の複雑さも読み取る。その手のものが読めない人にはただ理屈っぽいだけだろう。
ボキャブラリーが少ない人は、人の心も自分の心も眼鏡のない近視眼みたいにぼんやりしか見えていないんだろうな。気が合うとか馬が合うってのも、お互いの言葉がスムースに通じる相手ってことだろうし。
自分が読んだ小説の本について「どんなお話だったか」しか語らない人は、きっとそれしか読み取れていないんだろう。「どんなお話だったか」の中には「何が書かれていたか」が含まれていない。そんな読み方をしていては、何冊の小説を読んでも役立たないだろうし、読む時間は途方のない無駄だ。だからそういう人は小説を読まなくなる。読まないから読めなくなる、悲惨な悪循環。
言葉を知らないってだけで、人のことや自分のことがぼんやりとしかわからない人になってしまうなんて、本当にひどい、悲しむべきことだと思う。
あたしは、本を読まない人が世の中に存在する現実を考えると、いつも絶望的な気持ちになってしまう。あたしにとって、その存在は、アフリカの餓えた子供たちや、戦争が起きている国や、人種差別をする偏った思考を持つ人たちと同じで、存在することは否定できないけれど、いっそ地球上から消えてしまえばいいのにと思わせられる存在。
そんな人も同じ日本人で同時代に生まれて同じ街に暮らしているってことが、どうにもこうにも、もやもやむかむかちくちくぎりぎりと苛立たしい。
小説の一冊を読む時間も生み出せない無能な奴がいっくらビジネス書やノウハウ本読んだって知恵はつかねえよと言いたくなる。
その一点において、あたしはかなり了見が狭い。読書に関しては過激派を自認している。
そしてやはりフランク・ザッパ。
情報は知識ではない、知識は知恵ではない。
ならば戒めに、言葉は思想ではない、思想は心ではない、と言うべきか。
ちょっとしたことが、とめどない不満になる。
ただの思考が、次々と不満に結びついていくのは、日常の心地悪さのせいかもしれない。
最近はどんな小説を読みましたか。どんな言葉を知りましたか。
あたしは「うっとりするような暑さ」という言葉の使い方を知りました。
本ではなく、友人のブログで。
ほんと、今日も朝からうっとりしてます。暑いの、嫌いじゃないんです。
- 2008/07/29(火) 10:04:52|
- 雑感
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わかる、わかる 笑
それだけでその人を判ったようなつもりになるのはよろしくないと思っていても、へえーと感心したり、幻滅したり、しちゃいます。
余談ですが、世の中には本棚を持っていない人というのもいますからねえ。本棚や書き物机のない部屋なんて、あたしには想像もつかないのだけれど。監獄にだって代用品があるらしいのに。ま、あたしんちにはテレビがなくて部屋に入るなり「テレビどこっ???」と訊いた友人もいましたから、人それぞれの感覚でしょうけれど。
- 2008/08/01(金) 03:08:24 |
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