仕事部屋

朝から深浦訃報の連絡であちこちに事実確認、合間に洗濯半分、掃除半分、後回しにしていた郵便物や宅配便などの片付け、霧雨の中をみどりさんと散歩、訃報がようやくニュースになって公表された頃にはいきなりぐらっと高熱でダウン、平熱35.4℃のあたしには38.7℃なんて大ごと、みどりさんも呼吸が浅くうんうん唸り続けて餌も水も受け付けない、病気の二人で体寄せ合って一晩、朝イチでふらふらのまま近所の獣医に行ったら年配女性の獣医師が生後二、三ヶ月の赤ん坊を抱いて出て来て「今ちょっと手が放せないのよ」とまるでうちの芝居のような展開、仕事途中のヒロシ君に来てもらってかかりつけの獣医に連絡を入れ、タクシーでみどりをかかりつけの獣医に連れてってもらい、自分は力尽きて寝込み中、アルカセルツァーで熱は一時的に下がるのだけど、体の節々が痛くまったく起き上がれない。

みどりさん、レントゲンやらスキャンやらであちこち検査したが原因不明、コヤで小学生男子と遊んで骨を痛めた疑いが強くひとまず痛み止め注射で様子を見ましょう診断、が、明日また連れていって今度は心臓の検査だそう、埃だらけで空気の悪い空間に何日も閉じ込めていたからなあ、ひとの方が数倍丈夫には違いなかろうがアベちゃんの赤ん坊もちょっと心配、帰宅後も呼吸苦しげな様子は変わらず、獣医処方の美味しい栄養食もほんのちょっと舐めるだけ、水分も採らず寝返りも打たず、意識朦朧とした様子が続いている。

龍さんにもミカさんにもお誘い連絡戴いたのに、今日はまだ外に出られる調子にあらず先送りさせてもらった、あたしの場合は高熱でも出さなきゃゆっくり休むことがないのでちょうどいい休養になってはいるけれど、みどりさんはちゃんと回復するんだろうか、元から癲癇持ちで長生きさせられないってんで手放さずに残した仔なのだけど、まさかまさかまだまだ。

お父さん危篤の中、発表会に参加したテルコからは「今のところ乗り越えてる」と連絡あり、さすがの生命力とちょっと安心したけれど、毎晩の危篤状態じゃ家族は辛かろう。

そして加奈ちゃん、一年くらい前にどこかで会ったのが最期になった、「体力なくて舞台できない」と淋しそうだった、体調優れない様子とは聞いていたけれど、ぎりぎりまで仕事してたんだなあ、あたしがテレビで観たのはタミヤスの出ていたSPだかで、後はCFをいくつも見かけていた、もっと仕事もしたかったろう、舞台もやりたかったろう、無念に違いない、
毎朝の食卓で世界情勢について語り合う家族だったそうだから、見送ったご両親のショックを想像するのもつらい、「福井さん」「山下さん」「深浦さん」と呼び合うお姉さん方と一緒だったのは寺山の「青ひげ公の城」一本だったけど、あのときもっともっと一緒に遊んでもらえたらよかったなあ、東京パノラママンボボーイズやってるのを知ってたせいか、加奈ちゃんはなんだかすごく演劇から浮いたイケてる遊び人な感じがして、憧れたけど近づくのは気後れしてしまっていた、思えば福井さんこと美加里も山下さんこと千景ちゃんもそういうタイプのお姉さんたちで、演劇臭くない演劇のひとってところが、その頃のあたしにはかっこよく見えてた、加奈ちゃんだけ忙しそうで二人芝居やれなかったし、出会っているのに自分の気後れで縁を結び損ねた気がしてなんだか悔いが残る。

ひととの出逢いに横着しちゃいけない。ケチっちゃいけない。怯んじゃいけない。
若くても若くなくても、それを大事にしてきたかどうかが、最後の財産だからなあ。

何かに夢中になること、熱中することの素晴らしさはよくよく知っているけれど、そんな日々を終えてふと日常に目を向けたとき、次々こんなことがあって対応しきれない。
どれだけ取りこぼしていたんだろうと怖い。
だからやっぱり、あたしには非日常への熱中より日常の目配りが大切だ。
つまるところ、非日常への熱中も執着も、全部日常性として飲み込んでしまえばいい。
そう考えると、あたしが小説を書くのは必然だろうし、あたしの作る芝居の方向性も全部その感覚の中にあるなあと思う。

非日常を飲み込めてしまえるほどの、壮大な日常。
がっしり地に足つけた自分が、どんだけ走れるか、跳べるか、立ち尽くせるか。

いやあ、年取ると、こんなふうに考え方が変わるんだねえ。
加奈ちゃんもきっと、そんな時期を経て、また違うところに向かっていたんだろう。
闘病、しんどかったでしょう、お疲れさま。
美しいところだけみっちり女優ができたんだから、神様にそういう人として選ばれていたんだろう。
淋しいけどね、信さんだって塩野谷さんだって、そうやって、自分より若い仲間をたくさん見送って、まだ自分はがっしり日常の大地に立ち尽くしているひとたちが大勢いるよ。
あたしもそういう人たちに少しずつ近づいていくんだろうね。

深浦加奈子にお疲れさま。
そして、我々はエレーナが去った後の舞台で、「生きてゆきましょうよ、わたしたち」なんて言ったりして、暗転を待つんだな。
  1. 2008/08/27(水) 19:46:24|
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