林真理子「RURIKO」読了、林氏はあたしに新人賞をくれた選考委員なので生意気を言うのはとても心苦しいのだが、素人の演じるシェイクスピア劇を三時間観せられたような感覚は否めない。
もっとも氏の小説としての魅力は十分で、ただそれが浅丘ルリ子、石原裕次郎、小林旭、美空ひばりという大スターが生きた特殊な世界を描く道具として役立たなかったように感じた、たくさんの取材をしたに違いないのだが、そこで聞かされた言葉がそのまま書き割りになっているばかりで、そう語る人の複雑な本質が見えない、女優という異人種を「特殊な経験を重ねただけの普通の女」として描こうってのが無理なんじゃなかろうか。
そればかりはどうしても「演じる」という異常な体験と、それを職業として続けていける異常な精神への共感がなければ一筋の光とて当てられないものだろう、んじゃあたしに女優が描けるかと言えば描けないし、描きたいとも思わんのだけど。
日活の歴史は大雑把に把握しているから話の流れにはスムースに入れたし、あたしの世代が知らないロマンポルノ以前の活気は楽しんだ、そうか、日活は二度崩壊したのだなと。
知り過ぎた読者ゆえ撮影現場にまつわる記述は雑な印象が拭えなかったが、美空ひばりの東京ドームのコンサートの場面はぐっときた。
やっぱりどれほどの筆力を持ってしても自分の目に捉えることが小説家の命綱なんだろうなあ、それと「監修」という重要な役どころが外されているのも大きな穴になっているんじゃないかしら、初舞台を踏む前のルリ子が「ゲネプロ」と使うのは違和感があるし、祐次郎を偲ぶルリ子の追憶に
『「本番、ヨーイ」と助監督が叫ぶ。カチンコが鳴る。カメラがまわり出す。』
とか出てくると、がっくりしちゃう。
日頃、取材を面倒がっているあたしには厳しい現実を見せつけられた感じ。
ううむ、行かねば、パレスチナやら韓国やらに。
- 2009/02/13(金) 23:39:02|
- 雑感
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自己レスしときます。
>『「本番、ヨーイ」と助監督が叫ぶ。カチンコが鳴る。カメラがまわり出す。』とか出てくると、がっくりしちゃう。
…なぜって、カチンコってのはシーンナンバー及びカットナンバーが書かれたもので、フィルムに写し込むのが通常だから。
つまり、カメラが回る前にカチンコが鳴ることは、あんまないケースじゃないかなあと、ひっかかってしまったのです。
ま、どうでもいいか、んなこた。
- 2009/02/14(土) 00:12:33 |
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- まえかわ #-
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わかりやすい!
わかりやすい一節を 例にしてるだけで
違和感は続いたのでしょうね…。
違うかもしれませんが 私も父の治療を見てきたからか
専門学校で偉いスゴいと言われてる先生の治療が
どうにも しっくり来ません
こんなもの あんな病は治っちゃうと
簡単に口にする
患者さんは みんな 治りたいんです。
だからこそ 気軽に治るなんて 口にしちゃイケない気がする
精一杯 患者さんと向き合って 治していこう 良くしていこう
と お互いにしなければ 治っていかないし
鍼で治るのではなくて 鍼は手助け 患者さんの治癒力が病を治すのになぁと
思ってしまいます。
まあ まだ 私は手伝いしか出来ませんが 学生なので…
先生になったら と 不安だらけだし
すみません 話し全然違うかも…。
- 2009/02/14(土) 05:17:36 |
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