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仕事部屋

620はムツオの日。

ジャック・ニコルソンで朝、三時間ほど寝てすぐに起床、のんびりパンケーキなど焼いてから一瞬だけ犬散歩に出て身支度開始、シルクの靴を履いて出かけるのも、こんなに暑いのにシルクのトップスを着っ放しも怖いから、靴とストッキングとTシャツをリュックに詰め、フル装備なのに足下はビーサンで出発、本日はお日柄もよく。

神谷町から懐かしい坂道を上り、ホテルオークラ別館に到着、古いホテルって薄暗い感じが好き、ティールームでモグラのゲリラ撮影隊と合流、ラウンジや会場付近の様子を伺いつつ、タイミング見てこそこそ撮影、式の出席は私だけだったので途中抜けして教会式に参列、初めて見る新婦が大変に愛らしい人でびっくり、うっとり見送った先に新郎の晴れ姿があってまたびっくり、賛美歌ハモるサクラがいるのにもびっくり。

披露宴の受付を済ませて一目散にモグラゲリラ部隊が待機しているティールームへ、狙ったポイントを指示して撮影に行かせ、こちらは席次表を眺めながら一服、披露宴会場の控え室でも一服、宴会場でテーブルについても一服。

会場が暗転してスクリーンには披露宴のために撮影されたオリジナル・ムービー、「誰が撮ったんですか?」とアベちゃんに訊かれて何も考えずに「榎本さんじゃない?」と答えた瞬間、カット変わってのトーンで今岡さんだと確信、新郎新婦が区役所に婚姻届をもらいに行って記入するというドラマチックな出来事がまったくドラマチックじゃなく撮られているんだから個性ってスゴい。

ラジオの野球中継でお馴染みのアナウンサー氏の滑らかな滑舌で「日本の芸能界の未来を担う俳優」と新郎が紹介され、「婚姻届を今朝提出してきました」という新郎からの報告で開宴、ド頭の新郎の挨拶で笑いを取ってなかなかに頼もしい。

一番手は新郎が出演した芝居の演出家で私も十代の頃から二丁目界隈で御世話になっている北見敏之氏のスピーチ、ベテランの俳優でも緊張してしまうのは会場が明るくて皆の顔が見えるからだと思う、北見ちゃんの声が上擦ってるところなんて、テレビじゃ絶対に観られない。
続いてのスピーチは扶桑社の方で新婦の元上司、程よいリラックス感が広がったところで新郎新婦によるケーキ入刀、すでにお色直し後のような上向きのテンションだったのは、夫婦のキャラクター。

ケーキ入刀

乾杯の音頭は私や北見ちゃんのいるテーブルから新郎の高校時代の恩師、結婚式には数多く出席されているのだろうし、教師という職業は役者なんかよりずっと喋り馴れているってことか、暖かくて気持ちのいい音頭で乾杯の後、食事が運ばれるまでの間を盗んで一服。

乾杯の音頭をとった「僕の好きな先生」がお隣に座っていたのでフレンチのフルコースを戴きつつ談笑、吉岡はこの先生の進路を追いかけて大学を選んでいるくらいだから、「僕の好きなおじさん」なんだなあとしみじみ。
推敲を重ねたスピーチでいくか真心一発勝負のダイジェスト版にするか、オークラに着いてからずっと悩んでいたのだが腹を括れないまま紹介され、腹が括れないままなりの中途半端なスピーチを披露、まあいっか目出度いしとスピーチ後に腹を括って一服。
私の次は新婦がSPA! 編集者時代に長年担当していたという覆面ライター氏のスピーチで、覆面で登場して覆面でもぐもぐ喋っていたので食事はどうするんだろうと心配したいたらちゃんと司会が突っ込んでお見事なタイミング、覆面氏はちゃんと覆面を外して食事を楽しんでおられました。
合間に今岡監督の「結婚までの道のり~本人出演による再現ドラマ」が何本か上映されて予想外な今岡ナイト、この贅沢さが判る人が会場にあんまりいないってのが尚のこと贅沢。
お色直しで新郎新婦が退場、新婦の付き添いは美しい母さま、新郎の付き添いは双子の兄、「似てます」とは聞いていたが同じ顔の兄は阪大の先生だそうなので多分中身は似ていない、因みに一番上の兄さんもやっぱり顔立ちと雰囲気は似ていた。

双子

お色直しで主役が不在中も、司会は新郎の友人たちや有名な甲子園出場校の監督さんだという新婦の親族、SPA! 編集長などにコメントをもらって回るフットワーク、お色直しで再登場の新郎新婦が大きなキャンドルにものすごく時間をかけて点火、なかなか燃えない二人という演出か、事実このカップルは交際六年、プロポーズの場面も今岡映像で再現されていたのだが、「普通、中止すんだろ」ってくらいの土砂降りの中で撮影しているのが悲壮で今度は妙にドラマチック。

後半では新郎の友人・川瀬陽太氏がものすごくターゲットの狭い狙いで歌とギター演奏を披露、続いて新婦の中学時代からの友人という可愛らしい四人が間奏でメッセージを挟んでのカラオケ披露。

新婦の友人

披露宴の招待状に《劇団サンデー番外公演「パンダの結婚」》と吉岡の弱気な手書き文字が書いてあったのでまさか新郎が余興をするのかとびくびくしていたが新郎の余興はなかった、あのメッセージはきっと披露宴は出し物であるという覚悟の中、こんな真っ当なことやっちゃいますという照れ隠しに控えめな自己主張っていうもの凄く吉岡らしい挨拶コメントだったんだろう。

お開きを控えて最後の今岡映像で、幼少期からの写真が新郎新婦からのメッセージ文と共に流された、双子だから幼少期の吉岡は全部二人いて笑えた、吉岡より三つ年下の新婦の、楽しげな写真にご両親の胸の内を感じて込み上げるものがあり、今岡さんもこの芸風で携帯小説の映画化とかいけるんじゃない?と突っ込んだら、お隣の席で、乾杯の音頭の先生が笑ってくれてなんだか嬉しかった。

込み上げたのは当人も同じだったらしく、続いての、新郎から両親への挨拶での吉岡は見事な号泣、男泣きなんて控えめなもんじゃなく、「う、うぐ、えぐ、ぐす」と子供のように拳で目を擦る、司会からは「手紙を読み上げる」と紹介されているのに完璧な暗唱での長台詞、北見ちゃんのスピーチで紹介した「奥行きのある演技」も、私のスピーチで紹介した、「嘘がない真っ正直さ」も、皆さん納得して下さっただろう、斜に構えてどこかからかう視線を捨てられない我々芸能テーブルでも皆目頭を押さえていた、場所が違ったらスタンディング・オベーション確実な、吉岡、一世一代の長台詞。

新婦の父さまからの挨拶にいかにも泣かせどころな定番BGMはいらないやね、披露宴の間中ずっとにこやかな父さまだった、吉岡の覚悟と、父さまが本当に吉岡を信頼しているのが伝わってきて、ああ幸せな結婚だなあとじんわり。
新郎新婦とご両家のご両親が退場してからも場内は暗いまま、スクリーンには今日そこにいた全員の名前がエンドロールされて、司会者への拍手の中、無事お開き。


これから先、あの挨拶より人の胸に響く台詞を、役者の彼はやれるんだろうか。
この先に、吉岡の長台詞でこんなに沁みる思いをさせられることがあるんだろうか。
今日みたいに、ほろほろと泣かされるような、素っ裸で剥き出しで全力を尽くしてそこに立っている役者としての吉岡を、観れるんだろうか。

ないんだろうな。
きっと、吉岡自身、芝居でも映画でも、あれほど心を動かしながら喋ったことはこれまで一度もなかっただろう。

私だって、日常であんなふうに込み上げるものを込み上げるままに言葉を打ち出した経験はない。
舞台の上でならすいすいと動く心も、日常では漬物石みたいになってしまう。
舞台じゃないところで与えられた台詞じゃない言葉を口して自分の心が震えることは、私にはきっとこれからもない。

舞台の上やキャメラの前でのそれがなかっただろう吉岡の人生には、すでにそれがある。
その瞬間を目にすることができて、本当に嬉しかった。

だってさ、その挨拶のときは、それまで明るかった場内が暗くなるんだよね。
そんで、新郎新婦と、ご両家のご両親にだけスポットが当たってるんだよね。
その瞬間に、吉岡の中のスイッチが無意識で切り替わるのを、見たぜ、あたしは。

ああ、吉岡はいつの間にか、どうしようもなく、役者なんだなあ。

会場を出るときの挨拶で、吉岡の母さまがあたしに「本当に、一番心配だった子で」と言って、またハンカチで目もとを押さえた。
抱きしめたくなって、半歩だけ近寄って、我慢した。

今日、あたしが感じたことを知って欲しくて長々と書いているのに、相応しい言葉が見つからない。

人生は、素晴らしい。

しかも、吉岡


  1. 2009/06/21(日) 02:01:58|
  2. 雑感
  3. | trackback:0
  4. | comment:5
<<タイトルなし

comment

だって、吉岡。
  1. 2009/06/22(月) 00:52:25 |
  2. URL |
  3. ま #KPRyFQWg
  4. [ edit]

随分ご無沙汰しております。
お元気そうでなによりなにより。
あいかわらず
アクティブですねえ~~
前川酒をのみ終えたので
ご報告に参りました。
よかったら覗いてみてください^^
  1. 2009/06/22(月) 01:20:06 |
  2. URL |
  3. Kenzaburo #-
  4. [ edit]

同級生テーブルで

突然おじゃまします。芸能テーブルの隣で参加していたものです。最近結婚式行っても泣くことはなかったんですが、睦雄のスピーチに泣いてしまいました。あんなに新郎が号泣したのは、初めてみました!スピーチで新郎があんなに褒められないのも、初めてみました!中学までの彼はものすごい努力家で、勉強も進学校の中で数本に入るトップレベルの学生でした。どうなっていくのかわかりませんが、少なくとも昔は努力する才能がありました。彼を見られて、「もっとこうしろよ!」とイライラされる事も多々あると思いますが、それでも、宜しくお願いします。
  1. 2009/06/22(月) 12:04:30 |
  2. URL |
  3. 高校同級生A #wZbs/UZI
  4. [ edit]

>高校同級生Aさま

こんにちは。コメントありがとうございます。同級生テーブル、楽しそうでしたね。
吉岡って友達いるんだ、と我々は驚いていました 笑
ご挨拶できるチャンスがなくて残念でした。
おためごかしの褒めスピーチが一切なかったところは、彼が如何に愛されているかという証しでしたね。努力家の才能は今も発揮していますし、人とのつながりを何より大切にするところはきっとご両親の教えなのでしょう。近頃珍しく立派な青年だと思っています。
8月の芝居も、ぜひ観に来てください!
  1. 2009/06/23(火) 13:34:46 |
  2. URL |
  3. まえかわ #-
  4. [ edit]

>Kenzaburoさま

部長、いつも感想をありがとうございます。早速拝読致しました。
肉屋の息子の話、私も好きです。
あれが一番、男性側に入り込んだエピソードなんじゃないかと思います。
「コイするヒト」は、「ブルーハーツ」のseason2に当たる連鎖式の短編集で、携帯サイトで連載していたものなので、一本一本を短く文体を平たくと心がけて書いていました。
その分、他の作品にはないスピード感が出たんじゃないかなあ。
女性向けの装幀で、大人の男性としては手に取りづらかったのではないでしょうか。
抵抗なく読んで戴けて嬉しいです :)
  1. 2009/06/23(火) 13:47:04 |
  2. URL |
  3. まえかわ #-
  4. [ edit]

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