今週水曜の小説教室は継続受講生に加えて新規受講生が数人、合計十六名でのスタート。
継続の方がおさらいばかりにならないよう、新規の方が何やらさっぱりな進行にならないよう、新しいメニューを入れつつ慎重な運び、それでもやっぱり一時間半は短くて予定したこと全部はできなかった、なかなか時間配分が掴めないのを反省。
ヤスコちゃんと計画した親睦会は個人情報保護法絡みでうまく連絡が行き届かず当日のお誘いになってしまった方もあったのに、ほぼ半数の方が参加して下さって、ざっくばらんなお喋り。
三ヶ月やってきて小説の書き方がわからないってことはつまり「描写」と「ディティール」と「エピソード」の使い方がわからないということなのだとわかった、試しにその場で「描写」という絵画教室的なことをやってみたら懇親会ではわかりやすかったと好評だったので、今期からの講義では集中的にその技術を身につけるための練習をしていこうと思う。
目の前で文章を書いてもらうのは初めてだったけれど、考える顔をちらちら見るとその人の集中の度合いや戸惑いの深さがなんとはなしに窺い知れる。
小説の指導は原稿の添削だけじゃない。
人を見て個性を見てその人の奥深くに隠されているものを引き出したい。
一人でやってるつもりになりがちな作業だからこそ、毎月顔を合わせるだけにしろ誰かがいて、「ああ、もう書き上げたのか、すごいな」とか「あの人はどんなものを書くのだろう」とか思う時間があることは決して無駄じゃあないはずで、教室の中でも印象の強い人、薄い人、書こうとするテーマと書き手の個性が見えたり見えなかったり、なんとなくぼんやりとでも、自分以外の人の存在を感じる時間になればいいと思う。
仕事で疲れた身体を教室まで運んで時間通りそこに座って人の話を聞くという姿勢も、その時間にお金を払っているということも、「小説を書きたい」というモチベーションの維持に必要なことなのだろう。
ことあるごとに編集者の「書きましょう」「書いてください」という言葉に励まされ支えられて書いてきたから、その言葉を意味付ける志の重要性だけは良く知っている。
モグラ町の稽古があるので1シーズンお休みしなければならないのだけど、その前に「描写」「ディティール」「エピソード」に特化した一ヶ月全二回のクラスをやることにした。塾でいえば補講のようなもの。
教える側にもうちょっときちんとしたマニュアルがあればメニューを作って単発クラスにもできるのだけど、残念ながら私にはそれほどのスキルがないのでどうしても一定期間の関わり合いが必要になってしまうが、時々こういう単発メニューを入れると流れが良くなるんじゃないかと思う。
そして更に三ヶ月全三回で演劇クラスをやることになった。
ワークショップと同じようなことをやるのだけど、もっとわかりやすくメニューを立てている。
ワークショップとは基本姿勢が違うし、集まる人も違う、素面でやらなければならないし、終わっての飲み会もない。何より「はじめての演劇ワークショップ」という企画なのだから怖がらせないようにしないといけない。
ワークショップでは続けてもらうことが何より「演劇」を知っていくことになるけれど、カルチャーセンターでの講義はそれじゃダメで、全三回なら全三回できっちりそれなりの何かを持って帰ってもらわなければならないから、こちらもそれなりの準備が必要になる。
常々小形くんと相談していることに、今のワークショップに並行して、何ヶ月かに一度だけ初心者クラスをやったらどうだろうという考えがあり、やる前から「それはまたしんどいなあ」と弱腰になってしまっているので、今回の企画は「どんだけしんどいか」のリサーチにもなって願ったりかなったり、今のワークショップに来ている人の補講クラスとしても役立つ内容になるんじゃないだろうか。
ともあれ、相変わらず出逢う機会には事欠かない。
作家さんて、普段、原稿を書くとき以外は何をしているんですか、と良く訊かれる。
いつも「何もしてない」と答えるのだけれど、私の仕事は「人と出逢う」ことで、普段は「人と出逢うための準備をしている」と言うのが正しいんじゃないのか。
書くことも、演じることも、演じさせることも、全部が「人と出逢うための準備」のように思えてくる。
むしろ、そう思うと本が売れないとか仕事が減ったとかの苦境が、些末なことに思えていいのかもしれない。
ま、どう言っても胡散臭いことに変わりはないし、私よりうんと年長の方に「先生」なんて呼ばれるようになって更に胡散臭くなる一方なんだけれど。
十代の頃、自分より年上のスタッフや役者たちに「座長」と呼ばれていたのを思い出す。
子供の頃から渾名をつけられることがなかったけど、「座長」や「先生」は私の場合、渾名の一種なんだなあ。
「マエカワ」とか「お母さん」とか呼ばれるのも、どこか渾名で呼ばれているような気がするのは、その呼び名に感じる責任なのか、闘う自我なのか。
- 2010/04/23(金) 14:03:00|
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