仕事部屋

入稿+脱稿。

電話打ち合わせをしながらの直しやメールでの指示と修正原稿のやり取りを何度も経て、取組中の短編は土曜の夜にようやく42稿目での「最終修正版」、月曜にゲラにして編集長に読んでもらった上で掲載が決まるという状態にまで辿り着いたところ。

追い込み段階で言葉を絞り出す経験ができたことも、それまでの自分のやり方がまったくアマチャンだったことも、読む人に判るように書くという当たり前のことも、慣れてしまったよろしくない書き癖も、十年目のこの時期に一つ一つ丁寧に突いて気づかせてもらえたことが有り難く、手前味噌に言えばそういう編集者と出会えたことが十年やってきた結果の一つであるに違いないと、ただ反省するだけじゃなく改めての期待と責任と自負を意識した。

小説書きたいと思ったのはデビュー三年目だったか、デビューの一作でとんとん拍子につながってきた仕事がふいっと途切れたとき、いつだってつきまとっている生活不安とかそういうこととは別にして、もっと書きたい、まだ書きたいと思った。お調子者の私は次々入ってきた仕事を軽々やってきてしまったと気づいて、一つ一つの仕事をもっと真摯に丁寧に力を込めてやっていかなければいけないのだと自戒したはずだった。

「つもり」は怖い。つもり、つもりが型になっていつの間にか中身が空っぽになる。芝居の稽古と同様に、やれるようになったときがダメになるときだ。やれるようになったその瞬間だけは、到達する何かがあっても、その瞬間を過ぎると、たちまちに「つもり」が始まってしまう。そうと判って、問いかけ続け、戒め続け、学び続けることすら、いつしか「つもり」になっている。

掲載はまだ決定していないけれど、この一作を書くために今できることは一通りやっているはずだし、この一作を書けたことは、一冊も本を出せなかった今年一年のうちでの一つの成果になったと信じられるのだから、掲載が決まって原稿料をもらえることよりもずっと大きな価値を得たのだと思う。

掲載が決まったとしても、ゲラが出て校正が入ってまた直してと、すべてのステップでのOKが出ないと、読者の手には渡らない。芝居を作る作業と小説を作る作業はとてもよく似ている。

日曜午後から無理矢理に頭を切り替えて始めたモグラ町の台本作業も、仮眠一時間を挟んで猛烈な勢いで進め、予定通り無事に脱稿して送信済み、こちらはもう台本を渡してしまえば後は皆一緒くたになっての稽古場作業だし、芝居は始まれば必ず終わるものだから、後はどれだけ楽しめるかの体力勝負。

書き出す前に一本目の「モグラ町」記録DVDを観て、面白いなあと思った。こんなホン書けるかなあとプレッシャーにもなった。それでも、シリーズ三本目に相応しい良いホンになったと思う。短編作業と並行していた分、「つもり」が削られて真摯に書けたのだろう。

龍さんとはまたやるだろうからサヨナラではないけれど、モグラの人たちとはサヨナラだ。
モグラ町は私にとって、大人になってから暮らし始めた第二の故郷のようなもので、成長した自分でなければ出会えない作品、小説ではやれないこと、日常ではやれないこと、演劇ではやれないことの全部と、小説で学んだこと、日常で得たこと、演劇から受け取ったものの全部がある。小説を書く自分が追いつかない、技術やセンスや経験や自信に裏打ちされた安全地帯だ。のびのび遊んで、胸一杯に深呼吸して、また違うところに踏み出して行く。関わった誰にとってもそういう作品であることが台本書きの誇りになっている、幻の故郷だ。

脱稿した後はどうにも自画自賛と自己憐憫が続くんだよなあ、かっこ悪い。
渾身の短編、掲載が決まったら大きな文字でお知らせします。


龍昇企画公演「モグラ町1丁目7番地」
2010.10.27-11.3 @こまばアゴラ劇場

作・演出 前川麻子
出  演 塩野谷正幸(流山児事務所)吉岡睦雄 稲増文 山本政保 吉田重幸 
     小林千里(U・フィールド) 津田牧子 ローザ桂木 渡辺真起子 龍昇
音  楽 熊坂義人+スパン子

水・木・金・月 19:30開演
土・火 15:00開演と19:30開演
日と千秋楽 15:00開演のみ

前売り 3500円のお取り扱いは イープラス
予約・お問い合わせは S.T.S 03-5272-4393(月~土10:00-17:00)

チラシのダウンロードができます





  1. 2010/08/30(月) 19:28:18|
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