仕事部屋

9.12

解放のニュースが流れて以降、常さんの一友人である私にも色々なメールを戴く、もちろん、順次お返事させて戴いているのだけど、大変申し訳ないことに、芝居の稽古に入っていてなかなかまとまった時間が取れず、返信が滞りがちであることをご容赦くださいますよう。

「あの時あなたはこう言った」的なことにお返事するには、自分のそれを思い出さねばならないのだが、私は本当に記憶力が悪くて、面白いほどに色んなことを忘れてしまっているなあと改めて思った、検索すれば色んな情報が出て来るのは幸せなことなのかどうか、忘れたまんま、都合よく記憶をすり替えたまんまの方が胸を張っていられるのになあとも思う、「公開恋愛」に関しては特に、久々に常さんの書いたものを探して読んで、当時の様々な気持ちを思い出したりもしたけれど、終わった恋愛は結局のところ他人事にしか思えず、恥じ入るどころか自分を嗤う始末。

人が感じることや考えたことを自分のそれとは違うからといって否定するのは無意味に感じるけれど、今になって思い出したように私にメールを送ってくる人たちの中には、常さんが思ったことや考えたことを文字で読んでそのまんまに、まるで自分が思ったことや考えたことのように飲み込んでしまっている人がいるんだろう、考えてみればそれはそれでその人の思うことであり考えることとも言えるわけだから別に構わないんだけど、そうやって知らないことを知ったつもりになって実際には知らずに人生を終えるのは如何にも勿体ないわなあ、そういう人はきっと余程のことがなければ私とは出会いたいとは思わないのだろう、私は是非とも出会って、出会った上で同じことを思うのか、訊いてみたいのだけれど。

「公開恋愛」は失敗だったなあ、策がなさ過ぎたなあ、ただ中途半端に曝すだけで挫折してしまったなあと思っているけれど、恋愛が失敗したと思ってるわけじゃない、当事者同士だって他人と同じように知らないこと、わからないこと、推察するしかないこと、想像するしかないことを抱えるのがごく一般的な人との関わりだろうと思う、だからこそ、その人の思うこと、考えることがそれぞれあるのだし、結局どんなことでも共有できる「出来事」は些細なことで、固有する「思うこと」「考えること」が関わり合いの殆どを支配しているからややこしい。

とはいえ、ややこしいことになるのはそこに重きを置きたがる人との関わり合いだけで、私など意図せずとも日に日にそこらがいい加減になり「誰がどう思ったって別にいーじゃん」が基本になって、他人の考えを理解しようとか理解してもらおうとかの意欲は仕事をするときに振り絞るのが精一杯になってしまった、「わかろうとしていない」という批判には「わかろうとしなければわからないもんは、わかったってわかったうちに入んねえよ」と返したい、だって実際に「わかろうとせずともわかるもの」はあって、それは「知る」より遥かに容易く飲めたりする。

わかんないものには近づかないのが無難だろうに、「わからない」ということを特権のように振りかざすタイプの人は、きっと「わかるつもりはないけれど、わかってほしい」だけなんだなあと思う、それはまったくフェアじゃなくて、わかってほしい人はわかってあげることにも心を砕くのが正当なんじゃないのか。

考えてみればそもそも「わかりあう」なんてことはずいぶんと他人行儀な気がする、友人や家族や恋人や仕事仲間であればわからなくともそのまんま「そういうもの」として飲み込むんだから、「わかりあう」必要がある時点でそれはそういう距離じゃないってことで、私はたまさか、そういう距離じゃない人と「わかりあう」ために労力を費やせるほど自分の暮らしに余裕がない、但し「知る」から始まって「知り合う」ことは多分いくらでもできる、すぐ忘れたりもするけれど。

私の恋愛感覚の原点は「知らないもの、わからないものに惹かれる」ことなんだろう、だから私の場合は誰かと出会って知りたいと思うことと恋愛感情の区別がつかない、同性愛の自覚はないけれど知り合った女性に夢中になったりするのはそのへんの仕組みなんだな、仕事が立て込んでいるときに恋愛モードにならないのも、恋愛してると仕事する気がなくなっちゃうのも、もしや自分にとってよりわかり易いものを求める結果なのかもしれない。


モグラ町稽古場は最初で最後の2連休が明けて役者が出揃った、まだ本読みしかやってないのに「どうしていいかわからない」とボヤく役者もいるけれど、「わかる」という傲慢な幻想を捨て去って「知る」ことにもっと尽力すればいいじゃないかと思う、稽古場での「わからない」は怠慢の逃げ口上と言い切れるから好きなんだよね、芝居。

【モグラ町1丁目7番地】アゴラ劇場のサイトに詳細があります。


  1. 2010/09/12(日) 06:32:17|
  2. 雑感
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comment

世の中が「わかろうとせずにわかるもの」だらけなら、どんなに楽だろうと思います。余裕がないと言いつつも人一倍心を砕いている前川さんのような気がします。うまく言えませんが。
  1. 2010/09/12(日) 20:47:04 |
  2. URL |
  3. ハイジ #-
  4. [ edit]

>ハイジさん

そんなふうに感じてくれる人が一人でもいてくれると、救われる気持ちです 笑
  1. 2010/09/20(月) 02:30:20 |
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  3. まえかわ  #-
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