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仕事部屋

龍さんのこと。

龍さんとの付き合いも長い。

そもそもは大鷹明良さんが龍昇企画の「まいらない男たち」に出たってことで紹介されたんだったか、当時の私にはおじさん劇団が面白く思え、一緒にやりましょうと強引に割り込んで、龍さんと大鷹さんとで「マニャーナ・セラ・マニャーナ」という劇団を作った。

一本目にやったのが「猫の話」、高校の国語の先生である犬井邦益さんの作・演出で、私は猫で龍さんはコオロギの役だった。ポップな衣装とアーティスティックな美術セットで、おじさんがぼそぼそ喋るっての、かっこよかった。
マニャーナは座長が持ち回り制で、翌年には私が「アパートメント」を書いて演出、好評に気を良くして大鷹さんも龍さんもズルするもんだから、その次の年にも私が書いた「アパートメント2」をやることになった。

が、龍さんが交通事故に遭って芝居どころじゃなくなり、急遽、塩野谷さんが出てくれた。
それきり、マニャーナはなんとなく消滅した。
龍さん、きっと本当に芝居どころじゃなかったんだろう、と思っていたんだけど、それでも龍昇企画はずっとやっていたのだと、後から知った。

その頃から4年くらい前まで、なんでかずっと疎遠になっていた。
後になって聞くと「だって俺マエカワ大嫌いだったからさ」と言われた。
当時、私と大鷹さんが結婚して離婚したので、それらの事情を横目に見て「ひどい奴だなあと思ったんだよ」と。
その通りだったし、私はそういうことが気にならないので、「またやらせてくださいよ」と言って、3年前に龍昇企画の「真夜中のマクベス」に出してもらった。

龍昇企画はたまに観ていた。おじさんたちのショボショボした芝居が好きだから。
けれど、龍さんはいつも足掻いていて、ショボショボした芝居なんかしたくないって思ってるふうに、いつもつんのめった芝居をしてた。
「真夜中~」の頃には少し疲れてきていて、ショボショボ芝居に引き込むチャンスだな、と思った。

たまたま、当時、某社の私の担当編集者が龍さんの弟で、稽古中には龍さんに「〆切なんです」と言って稽古をサボり、龍さんの弟には「稽古があるんで」と言って〆切を延長してもらったりして。
弟といっても私よりうんと上のおじさんなわけで、おじさんのお兄さんとかおじさんの弟とかってのがなんだか面白く、「真夜中~」の大改訂版として、おじさん兄弟が出てくる「モグラ町」というホンを書いた。
そしたら龍さんは「これはこれで、来年やろう」と言って、私を演出に選んだ。
私もだいぶ大人になったのだけど、龍さんも大人になっていた。

モグラ町での龍さんの役所は平井家の長男・昇司(ショウジ)で、ゴム製品を取り扱う会社の万年係長、ということになっているのだけど、その実、龍さんは社長なのだ。
昔からやっている仕事をまんま独立させて、バンドやら芝居やらをやっている若い子を雇っている。
その昔にはやんちゃなチビだった息子が副社長で、私ともたまにデートしてくれる。
龍さんの会社の若い子たちはみんなとても真面目に働いていて、社長はちゃんと尊敬されている。

もちろん、モグラ町のキャストもスタッフもみんな、龍さんを尊敬している。
しょうもねえ、と笑っちゃうんだけど、そのしょうもなさの中身が、到底真似できない努力だったり根気だったり決断だったりするから。

龍昇企画は、ひっそりと二十五周年を迎えたそうだ。
「老年のハチャメチャ、猥雑、自由をやりたい」と企画書に書いてあった。
「モグラ町」も本当は、三部作で終わらせずに、皆がボケて台詞など一言も思い出せなくなるまでやりたい。
なんて話をしていると、「今だって大して変わらないからなあ」と龍さんがボヤく。

私の中では、「これがやりたいんだ」とムキになって、つんのめった気持ちでショボショボした芝居をやってるオジサンたち=「なんとかかんとか生きて行く」モグラ町の人びとだ。

龍さんは、誰よりしんどそうに稽古場にいるけれど、誰より楽しそうに芝居をする。

りゅうさん


龍昇の「モグラ町1丁目7番地」、ご予約受付中。
  1. 2010/10/09(土) 11:25:41|
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