11.16「ラザロ 蒼ざめたる馬」「ラザロ 複製の廃墟」11.17「ラザロ 朝日のあたる家」11.18「行旅死亡人」を連日観て渋谷ユーロスペースへの井土詣もひと段落、ラザロ三部作は三本目「朝日のあたる家」から明確に今の井土監督の特色につながるものが見えた気がする、12年前の作品「百年の絶唱」に感じた混沌がすうっと鎮静した感じ、「行旅死亡人」は長宗我部陽子の類い希な美しさと確固たる力量を堪能、それでも食い足らないのは長さん突出で他の俳優がお粗末になってしまった副作用なのだろう。
ラザロ2日目トークゲストでいらしていた脚本家の高木登さんとお話したら高木さんは「モグラ町」の劇評をネット上に書いて下さっていた、高木氏主催の劇団鵺的の主演俳優がうちのワークショップに来てくれていたのも高木さんが「モグラ町、観に行け」と薦めて下さったからだった、ご縁はつながる、巡り会う、循環して還元して渦巻きのように世界が広がっていく。
土日のワークショップはメールサーバーの不具合を通知して再送の申込を受け直し12人の参加で再開、朝日CCでやったワークショップやモグラ町でのワークショップからの参加者、日曜は京都から遊びに来ていた人の飛び入り参加もあって男女半々なれど、男子は映画系20代の若手が殆どで女子は概ね30オーバー、言い争いのエチュードをやってみたら男子から「女子って年じゃないでしょ」が飛び出して女子組が食いつき、終了後の飲み会では男子たちが恐る恐るに「いや、まじ全然見えないっすよ」などのフォローするのでお姉さんたちニコニコ、どちらも可愛らしいったら、映画系で知り合って来てくれている人と朝日CCのWSに参加してくれていた人が過去の共演者であったり、飲み屋で「私も誰それとこのWSで偶然に再会した」系の話、高校の先輩後輩だとかもあるし、世の中に数多ある渦巻きの一つが小さく存在している実感は嬉しい。
月曜に「犀の角」観てアフタートーク、素面だったのでテンション低かったけど睦雄さんが頑張って話を捌いてくれたので暢気でいられた、「役者は時間を作る存在」という井土監督の俳優論あまりにすんなり共感したのでお客さんのために広げられなかったのが反省点、ロビーには単行本や文庫本持参してサインを求めて下さったお客さんもいらして、新規客層が「犀の角」観てくれたのだとしたら役割果たせたかもと気を取り直す、宴席には来場してくれたWSの子らも一緒させてもらい、「へばの」木村文洋とも久々に話した、木村くんが連れてきてくれたバイト先の友人という人が第三エロチカの元劇団員で、なんと奥様がうちのWSの卒業生、ここでもまた渦巻きに飲まれて朝帰り3日目。
「犀の角」は一揆上映作品の中で一番好きな映画になった、井土監督の過去と現在が緩やかに混在してふわり抜けた空に広がっている、映画学校の卒業制作として撮られた作品なので、学生俳優を見つめる暖かさと先を歩む人としての鼓舞、今なお先頭に立ち続ける荒々しさがそこかしこに散りばめられどの役者より監督自身の思いが映り込んでいるように感じた、小さな町に流れ着いたカルト教団の残党という設定があるせいか宗教を扱う難しさについて語られがちな作品と思うけれど、そんなものは人物の背景に過ぎない、ならばいっそそれらすべてに関わる情報を思い切り薄くしても良かったのかもという話を、これが脚本デビューだった川崎龍太くんと話したりもしたけれど、いやいや充分にバランスの取れた出来の良いホン、バランスよく見せられた大きなポイントは役者の居方にあって、主演の学生さん二人がしっかり自分の時間を映画に持ち込んだこと、助演のプロ俳優二人が役割飲み込んで加減よく働いていることにあるんじゃないか、そしてその具合のいい采配ってところで、やっぱり井土監督が「辿り着いたもの」に思う、もちろん次が続いていくんだから長い旅の途中にひょいと腰を下ろして一息ついた、という意味なのだけれど、ちょっとね、ガス・ヴァン・サントみたいで素敵。
「犀の角」上映は11/26(金)まで、連日21:00から渋谷ユーロスペースにて。
「
映画一揆 井土紀州2010」はまだまだ続く。
- 2010/11/24(水) 03:12:46|
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