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仕事部屋

ゆく犬、くる犬

2003年4月10日に生まれたイタリアングレーハウンドの仔犬は、生後4ヶ月ごろから私の息子になり、2019年12月6日に16年と8ヶ月近くの短い生涯を、私の腕の中で終えた。

寝たきりになって、介護にへとへとになって、食餌もとらなくなって衰弱して亡くなるものだと、覚悟していたところが、あまりにも急だったので、未だどこかぽかんとしてしまう。

亡くなる前日に診察を受けた呼吸器科のレントゲンでは、心配していた気管虚脱は軽度だが肺に爆弾みたいなものがあるから突然の呼吸困難で亡くなる可能性もあると言われていた。
その夜も、いつも通りに食餌を完食し薬を飲んで落ち着いた様子で寝ついたので、早めに診察を受けて良かったと話していた。
全盲だったので排泄や食餌は抱き抱えて移動させる必要があったし、足は少しふらつくようになっていたが、16年と8ヶ月を静かに穏やかに生きていた。

可愛がってくれた人たちや、2度の交配で生まれた仔犬たちの家族に訃報を知らせ、たくさん優しい言葉をもらった。
骨壺を置く棚を寝室に取り付けた。
扉つきの棚に、写真を飾り、骨壺を置いた。

朝起きてからと、仕事を終えて帰ってからの時間を、持て余した。
後悔を数え上げたら自分が生きていけなくなりそうなので、泣きながら、次に飼う犬を探した。

12月17日、私たちは新しい仔犬を家族に迎えた。
ウィペットという犬種なので、名前は「ういろう」にした。
老犬から苗字をもらったので、濱田初郎という名前になった。
千葉の先まで電車で迎えに行った。
犬舎はあの大雨災害で被害に遭っている。
必死で守り抜かれた命を譲り受けた。

4ヶ月を過ぎたばかりの仔犬なのに、亡くなった老犬より二回りほど大きく、老犬が愛用していたスリングから体がはみ出す。
体半分のスリングで大人しく連れてこられ、居間に置いた新しいハウスで、とうに老犬が遊ばなくなったお古のおもちゃで遊ぶ。
注文していた仔犬用の首輪が届いたが、はなからサイズアウトしていたので返品した。
今のところ、老犬が一番小さいベルト穴で使っていた首輪の、一番大きいベルト穴でぎりぎりに留まるので、これも老犬のお古を使わせている。

1階が、廊下〜台所〜居間〜書斎〜廊下と、ひとつなぎのぐるりなっている間取りなので、トレーニングから解放された仔犬が狂ったように駆け抜ける。
そうやって骨折すると知っているから、フローリングの部分に滑り止めのカーペットを敷いたら、孫が床でゴロゴロするようになった。
獣医のチェックを受けてから散歩に連れ出したが車や人を怖がって歩かないので、抱き抱えて歩いた。
外国の漫画に出てくる、子どもにしがみつく気弱な大型犬のような状態になる。
足音が大きいので、気配だけでは亭主と犬の区別がつかない。
歯が抜け始めているので、部屋のあちこちで小さな歯が見つかる。
健康な目は表情が豊かで、視線が合うたびに孫が笑い転げる。
仔犬は、後ろ肢で立てば孫の背より大きい。
その図体が、1メートル近い距離から私の膝の上にどさっと跳び乗ってくる。
私と娘は仔犬のしつけ方の情報を収集して、励まし合いながら取り組んでいる。

そうだった、こうやって育てたんだったと思い出して、してやれなかった悔いの分、やり直しをしている。
仔犬は隅々までとても健康な、しっかりした体をしている。
若さと生命力が満ち満ちていて、そのことに、また涙がこぼれる。


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濱田帆太郎

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濱田初郎


帆太郎を可愛がって下さった皆さん、ご援助下さった皆さん、お悔やみを下さった皆さん、誠にありがとうございました。
おかげさまで、結構な生涯だったろうと思います。
この2年の隠居生活はしみじみ幸せそうでした。

引き続き、初郎の成長もどうか見守ってやって下さい。






  1. 2019/12/24(火) 03:59:08|
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