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仕事部屋

知人より驚愕の情報、シネマヴェーラ曽根中生特集「ブレイクタウン物語」が上映される! しかも「新宿乱れ街 いくまで待って」と同じ日のプログラム、「ブレイク~」は私が16歳、デビュー二作目つまり「家族ゲーム」と「母娘監禁・牝」の間、順子という役名で、初めて二枚看板でクレジットが出た映画だった。

知り合いの紹介で主人公の役のオーディションに行かされたのだけど、台本読んでこっちの役がやりたいなあと思っていたのが順子で、曽根中生が「順子役でやらないか」と言ってくれたのに仲介してくれた人が「16歳だし主役じゃないのにベッドシーンは損」と断ってしまった、シャブ中(注射シーンあり)のホテトル嬢(客と寝るシーンあり)が男に棄てられて(階段落ちシーンあり)シャブファックしながら弟分に殺される(首締めシーンあり)の順子役をどうしてもやりたくて頼み込んで再度交渉してもらって決まった役だった、あの役、私がやらなかったら現役16歳の女優は誰もやらなかっただろうけど。

アパートの階段を転げ落ちる場面を自分でやって足を引きずりながら帰ったり、太腿に入れ墨したまま帰宅して母が「それ、落ちるの?」と涙目になってたり、人生初のファックシーンの撮影後に日活撮影所の風呂場を使わせてもらって、ドアの外にずっと助監督が立って撮影所のスタッフが入ってこないか見張ってくれてたりした、あの助監督は19歳とかだったはず、てことは村さんとかと同期になるんだろう、照明の金沢さんやキャメラの鈴木さんとの最初の仕事もこれだった、金沢さんは順子が殺される長回しのファックシーンにもの凄く凝った明かりを作ってくれて映画の中でその場面だけ丸きり色が違ったりする今でも大好きな照明さんで、飲み屋でにこにこしながら腕時計くれたりした、キャメラの鈴木さんは「昨夜撮影したあのカットがそのまま夢に出てきたよ」なんて言って慣れない街頭ロケや浩市さんとの共演でびくびくしている私を慰めてくれた、その後鈴木さんは「母娘監禁・牝」の現場で、撮影初日に遅刻した私が、挨拶してもスタッフの誰一人応えてくれないという苦境の中、「順子ちゃん、久しぶりだね」と声をかけてくれていっぺんに新人のくせに遅刻しやがってな呪縛を解いてくれたりと本当に助けて戴いた恩人。

原作者は本物のヤクザをやってた人で、その後高田馬場に事務所があったらしく、友人がラーメンを配達したときに映画のポスターを観て「これ俺の友人です」とか言ったら大喜びして小遣いとかくれたらしい、私を順子役にキャスティングしたのは曽根さんとその原作者の大プッシュだったと後から教えられた、「本当にいるんだよ、こういう子が新宿にはたくさん、可哀想なんだ、だから美化したくない、痛ましく描きたい」と原作者は私に言った、私は猛烈に覚せい剤の勉強をして現場に臨んだけど、注射指導に来てくれていたヤクザが「一回やってみりゃいいんだ」と笑っていた、注射を打つ場面はワンカットでいくと浅尾監督が言ってブドウ糖の注射を打ってキモチイイ顔の演技をしたりした、それがリアルかどうかは誰にも演出できなかっただろうけど、ヤクザは「いいねえ」と目を細めてうずうずしていた。

公開当時はロケをしてた歌舞伎町を歩くとヤクザの兄さん方に「シャブ中の順子ちゃん」と声をかけられるほどだった、兄さん方は皆一人や二人シャブで可愛い女を失っているのか、映画館のロビーで「俺泣いちゃったよ」と言ってくれる人もいて目元をこする手には指が一本足りなかったりした、小学校の同級生だった男の子が映画を観たと連絡してきてくれ、「スキーのお土産」とネーム入りのマグカップを二つくれた、一つには「asako」もう一つには「junko」と彫ってあった、思えばあれは高校生男子の純情照れ隠しだったのか、それとも映画の中の順子に恋していたのか、それからしばらくは映画関係のどこに顔を出しても「ブレイク~でシャブ中やった子」と紹介されていた、私もATG映画で観た憧れの銀粉蝶みたいな女優になれるんじゃないかとその気になっていた、普通の女子高生の役なんて全然回ってこなかったけど、台本を読んで絶対にやりたいと興奮した自分の気持ちは今もそのまま思い出せる。

浅尾監督には最近吉岡がお世話になっていたりするのにもうずいぶん長いことお会いしていない、共演した人たちも挨拶できるチャンスがあるのは唯一浩市さんだけで皆さんどうしていらっしゃるのか、マカオのビデオ屋で見つけた海賊版VHSは持ってるけどDVDなんぞにはなっていないからものすごく貴重なチャンス、てか本当にフィルムがあるのか、フィルムで上映するのか俄には信じられない。

しかし「消えゆく曽根中生!?」という特集タイトルは変えようよ…。

「ブレイクタウン物語」
1月25日(月)12:20/15:35/18:50
1月26日(火)11:00/14:20/17:50

その他の作品も盛り沢山、上映時間ご確認ください。因みに「新宿乱れ街~」は師匠・荒井晴彦のデビュー作。
  1. 2009/12/26(土) 13:07:48|
  2. 雑感
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子供の頃のクリスマスは12月になると母がこっそり一人でデパートに出かける回数が増えて知らんぷりしながら見送る毎日の方が当日より楽しかった、小さい窓を毎日一つずつ開けていくカレンダーとか、クリスマスの朝に郵便で届くでっかい板チョコとか、さんざっぱらな愉しみの最後の最後にクリスマスプレゼントがあったけど、一人っ子で欲しいものをそれほど待たずに買ってもらえる環境だったこともあって、クリスマスプレゼントをものすごく喜んだのはうんと小さい頃だけだったのかもしれない、小学校高学年になると自分のお金で自分のプレゼントを買っていた、週末ごと遊びに行ってた代官山で見つける細々した雑貨やお菓子なんかをちゃんとラッピングしてもらって、クリスマス用の大きめの箱に入れていく、イブの夜にしっかり箱ごとラッピングして翌朝起きたら一番に開けるのが何より愉しみだった。

思えば、年頃になってから母親と買い物を楽しんだ記憶がない、子供の頃は母の長い買い物に付き合わされたが、ついて来るデパートの外商部のおじさんとかも甘ったるい声で話しかけられるのが面倒で、父と行く本屋の方が好きだった、今なら母と一緒に出かけてお互いの贈り物を選んだりするのに、そういう記憶がないのは娘らしさに欠けているようでなんだか淋しいことだとこの年齢になって初めて思う。

こんな私でも一応はクリスチャンなのでクリスマスは家族と過ごすのが基本だったけど、そういう家族の行事ってのは大人になってからでないと楽しめないものなんじゃないか、小学校低学年までは実行していただろうそこに楽しかったという印象がなくて残念。

さて今年のクリスマスは昨日からの微熱を堪えて決死のコインランンドリーに始まるも一回分で挫折、スケジュールを確認した上で泣く泣く水回りを避けた小掃除までは遂行するもあっさり力尽きて、結局はいつもの範疇じゃないか、ピザやらフライドチキンやらドーナツやらのジャンクフードで「メリークリスマス!」というメッセージと共に届いた短編のゲラと睨めっこ、タイトル変更と書き足し要請が出て4日戻しの〆切、てことは明日からのイベントこなして大晦日と元旦に集中作業すれば、親方の正月休みに合わせて実家に帰れそう、実際には数えるほどしか行ったことのない家でも気分だけは帰省っぽくてそれなりに愉しみ、娘と嫁が暮らす家だから帆太郎には自宅だし、それぞれ単身赴任中の私と帆太郎にとって年に一度の家族行事。

ワークショップ・小説教室とも、1月の募集を開始しています。
新年に何かやってみたい方、まずは出逢いましょう。

  1. 2009/12/26(土) 01:28:58|
  2. 雑感
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